京都大学は、同大理学研究科の前田啓一准教授、東京大学 土居守教授、同・茂山俊和 准教授、姜継安氏らの研究グループが、国立天文台、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構などと共同で、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam」(HSC:ハイパー・シュプリーム・カム)を用いた観測により、爆発後1日以内のIa型超新星を捉えることに成功したことを発表した。この研究成果は10月5日、英国の科学誌「Nature」に掲載された。

白色矮星に降り積もったヘリウムが星の表面で爆発し、白色矮星の中心の核融合反応に点火した模様を表す想像図(出所:京大Webサイト、提供:東京大学大学院理学系研究科)

Ia型と呼ばれる超新星は、爆発規模がほぼ同じでピーク時の明るさも揃っている性質から「宇宙の標準光源」とも呼ばれ、宇宙の歴史と未来を知る上で重要な役割を果たしているものの、Ia型超新星に至る進化と爆発過程には多くの謎が残されている。白色矮星と呼ばれる特殊な星の核反応暴走爆発であることが知られているが、どのように核反応暴走の引き金が引かれるかの詳細は未だ解明されていない。

このたび研究グループは、すばる望遠鏡に搭載されたHSCを用いて爆発後1日以内の超新星を捉えることに成功した。この観測結果から、この超新星はこれまでに観測されてきたIa型超新星の変化から推測されていたより、ずっと早い時期に明るくなっていたことが判明した。さらに、明るさと色の時間変化を詳細に調べると、従来考えられていた理論モデルで説明できないことも明らかになった。

そこで研究グループは、スーパーコンピュータを用いて詳しい理論計算を行い、この超新星の正体を解明した。白色矮星に降り積もったヘリウムの層の最深部で激しい核融合反応が始まり、その衝撃波が中心に伝播して星全体が爆発するという機構でその観測的特徴が良く説明できることがわかった。この機構は、Ia型超新星の爆発機構として提案されていた説のひとつだが、それに対する最初の確たる観測的証拠であり、極めて重要な成果である。

これらの成果は、Ia型超新星の詳しい爆発機構が観測データを用いて立証された初めての例となった。こうした爆発機構が一部の超新星のみで働くのか、あるいは普遍的な機構なのかを解明することが、今後の課題となる。研究グループは今後、さらに観測を進めることで多くの超新星を検出し、その中からより初期段階の超新星を探し出す予定としている。