海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、サイデン化学は共同で、深海極限環境にヒントを得たナノ乳化技術MAGIQ(Monodisperse nAnodroplet Generation In Quenched hydrothermal solution)を利用した水系アクリルナノエマルション製造プロセスの実用化に向けた研究開発に着手すると発表した。

深海の熱水噴出孔から噴き出す熱水(出所:JAMSTECプレスリリース)

水系アクリルナノエマルションは、微細なポリマー粒子を水に分散したアクリルエマルションと呼ばれるナノ材料。塗料や接着剤市場は、その約6割が有機溶剤ベースの製品で占められており、これらの製品を、環境に優しい水ベースの製品へと置き換えるための研究開発が活発に進められているが、水ベースの製品は塗膜の透明度などの性能面で劣るために思うように置き換えが進んでいないのが現状となっている。優れた塗膜透明度を有する水ベースの塗料・接着剤を開発するためには、これらに広く用いられているアクリルエマルションに含まれるポリマー粒子のサイズを極限にまで微細化することが必要となる。

サイデン化学では、ポリマー粒子の超微細化を実現する手法として、深海熱水噴出孔に存在する高温・高圧環境での水の特異な性質にヒントを得て、JAMSTEC海洋生命理工学研究開発センターで開発されたナノ乳化技術「MAGIQ」に着目。2016年度に両者が共同で行ったフィージビリティースタディーでは、MAGIQによるナノ乳化技術とサイデン化学の重合技術を組み合わせることで、直径50ナノメートル以下のポリマーナノ粒子からなるアクリルナノエマルションを製造することに成功した。

MAGIQは、技術の普及に向けたオープンイノベーションプラットフォームの整備や製造能力の引き上げを目指した実用性検証が急ピッチで進んでおり、今後、両者は、2年をかけてアクリルナノエマルションの実用化に向けた製造プロセスの最適化を進め、サイデン化学では2020年を目処に、同技術を用いた最初の製品を上市する予定となっているということだ。