マシンビジョン・システムは、画像を使用してシステムやプロセスに関する情報を収集したり、撮影した画像に基づいて意思決定を行います。最終的には照明やソフトウェアも関係しますが、カメラとその目の役割を果たすイメージセンサがシステムの全体的な動作や製造品質の改善、生産性の向上を実現するための重要な要素です。

標準的なマシンビジョン・アプリケーションにおいては、基本的な測定、計数、検査の機能が必要です。対象物を評価して、存在する物体の数を確認し、特徴の数やサイズ、特徴の品質レベルを判定することができます。マシンビジョン・システムは、例えば、アイテムに適切な数の穴が穿孔されているか判断するだけでなく、各穴の間隔や形状を検証するのにも使用できます。別のアプリケーションでは、対象物の位置をロボットアームでピックアップできる場所に設定したり、正しい位置に特徴があるかどうかを判断することができます。また、バーコードの読み取り、ナンバープレートなどの対象物の文字認識、あるいは液面の測定など、情報を解読することが必要な場合があります。

これらの機能によって、最終的なカメラシステム、さらにはアプリケーションに選択されたイメージセンサに必要な特性が実現されます。撮影画像品質の最小レベルが何かによって、画像解析用コンピュータ・システムが正確な測定を行えるかどうか、あるいは正しい結論に達することができるかどうか判断されるので、そのレベルを理解することが最も大切です。このポイントは重要であり、撮影画像の品質が解析や使用に十分でない場合、フレームレート、パワー、サイズなど、他の特徴はそれほど重要ではありません。

歴史的に、CCDイメージセンサは、プラットフォームから得られる画像品質や性能が高いため、マシンビジョン・アプリケーションに必要とされてきました。しかし今日、CMOS画素設計の進歩により、得られる画像品質がさまざまなエンドアプリケーションにとって十分なものとなったため、CMOSイメージセンサが広範囲に及ぶマシンビジョンの最前線に躍り出てきました。

オン・セミコンダクターのPYTHONデバイス・ファミリに使用されるような最新のCMOSイメージ・センサ・プラットフォームは、モーション・アーチファクトを生じることなく移動する対象物を撮影できるグローバル・シャッタ画素設計に基づいていたもので、画素内相関二重サンプリング(CDS)は、読み出しノイズが低く、オンチップ固定パターン・ノイズ(FPN)補正が画像品質の維持に役立ちます。これらの画像品質を向上させる機能と10ビット・A/Dコンバータ(ADC)や60dBダイナミック・レンジの活用により、マシンビジョン・システムは動作上、CMOSプラットフォーム特有の利点を活かすことができます。

多くのマシンビジョン・アプリケーションは、生産性の向上に向け、より高速度での動作を目指しているため、高帯域幅の読み出しをサポートするイメージセンサのニーズが高まっています。デジタル出力を追加してCMOSデバイスで利用可能な帯域幅を増やすことができますが、CMOSプラットフォームの出力アーキテクチャはこれを直接的に可能にします。例えば、32個の個別LVDS出力の使用により、高解像度対応のPythonデバイスは、10GigEやUSB 3.1などの最新のコンピュータインタフェースを上回る帯域幅を実現でき、25Mピクセル・デバイスでは標準CCD設計の能力をはるかに超える、最大80fpsの読み出しをサポートしています。

また、CMOS出力設計に特有の柔軟性により、イメージセンサ・アレイの一部のみを読み出す関心領域(ROI:Region of Interest)モードでの動作時には、これらのデバイスで実現できるフレームレートをさらに高速化できます。適切に配慮して設計すれば、この方法による動作時の速度上昇は、ROIのx座標とy座標の両方で拡大でき、より標準的なCMOS出力設計(ROIのx座標でのみ拡大)を使用する場合よりも高速なフレームレートを実現できます。

一例として、PYTHON 5000イメージ・センサの実際のフレームレートを、標準的なCMOS出力設計を使用した同様な5Mピクセル・センサの理論フレームレートと比較して検討してみましょう。

最大解像度においては、両設計とも同じ約100フレーム/秒のフレームレートを提供します。ただし、画像の720P(1280×720ピクセル)領域を読み出すときには、PYTHONデバイスのフレームレートは600fps近くまで増加しますが、標準出力設計では300fpsまでしか増加しません。デバイスで達成可能な全フレームレートを最大化しようとする際は、この速度向上が重要な差別要因になる可能性があります。

マシンビジョン・アプリケーションでは、撮影画像で細部を示すために高解像度が必要な場合がよくありますが、このニーズは必要以上に多くの情報を取得してデータ処理が遅れないよう調停しなければなりません。適切な画素数を持つことに加えて、アプリケーションのための画像キャプチャを最適化して、これらの画素を適切なアスペクト比で配置することも重要です。例えば、1:1に近いアスペクト比は、画像キャプチャをカメラのレンズの視野全体に最大化するために、ピック&プレース・アプリケーションのカメラによく使用されています。

アプリケーションの具体的な画像ニーズに基づいて、全体的なイメージング・システムを最適化するために、さまざまな分光感度(色、白黒、拡張NIR)も必要になる場合があります。カメラメーカーは、カメラの設計・製造工程を最適化するために、最終顧客向けカメラ・オプションの完全なポートフォリオが迅速かつ効率的に開発可能になる、複数解像度ノードやカラー・オプションを含むイメージセンサ製品の統合ファミリを求めています。

PYTHONデバイス・ファミリは、解像度がVGAから25Mピクセルを超える範囲に及ぶ40種類以上のオプションを提供しており、この種のデバイスファミリが展開される一例となっています。これらのデバイスは、モノクロ、バイエル・カラー、拡張NIR感度を含む複数の構成で提供され、選択したデバイスは低電力構成、またはカメラ組立工程中にイメージセンサを保護するための取り外し可能なテープ付きで入手可能です。カメラメーカーは2枚のPCBだけでファミリ全体をサポートでき、また開発時間を短縮するために全面的な評価サポートを受けることができます。

それでも一部の特殊な用途については依然としてCCDイメージセンサのほうが有利ですが、マシンビジョン・アプリケーションへのCMOSイメージセンサの採用が加速したのは、画質、帯域幅、画像柔軟性、構成柔軟性などの特徴によるものです。このプラットフォーム内でこれらのデバイスによって実現された画像処理性能は、産業用画像処理に対する新しい性能および機能水準の先駆けとなりました。

著者プロフィール

Michael DeLuca(マイケル・デ・ルカ)
ON Semiconductor
イメージセンサ・グループ
インダストリアル & セキュリティ事業部
市場開拓担当マネージャ
デジタルイメージング製品とアプリケーションにおいて20年以上の経験を持ち、技術、販売、エンドマーケットの広範囲な知識を有する。ニューヨーク州立大学バッファロー校で化学における理学士号を、またイェール大学で物理化学の博士号を取得。