セルラー機能の効用はそれだけではない。Apple Watch単体で利用できるサービスがより拡がったのだ。

筆者が普段Apple Watchを使う中で最大の変化となったのがSiriへの対応だ。

短時間のウォーキングに出かけるときは、これまでもAirPodsとApple Watchの組み合わせだけで出かけていた。Apple Watchにあらかじめ音楽を同期しておき、AirPodsとペアリングして聴きながら、ポケットに何もない状態でウォーキングを楽しんでいたのだ。だが、エクササイズをスタートするとき、あるいはちょっと何か情報が知りたいとき、Siriを使おうとすると、iPhoneがないため利用できない。音声の認識にも、Siriの処理にも、セルラー機能が必要だったからだ。ワークアウトはApple Watch内の機能であるのに、それを起動するSiriは使えないというのは、どうしても納得いかなかった。

Apple Watch Series 3は、iPhoneがなくても、いつでもAirPodsからSiriを呼び出すことができるようになる。天気やスケジュール、リマインダーの設定など、思いついたことを音声で何でもこなせる。しかも、iPhoneのように、音声のフィードバックも採用され、より自然にSiriが利用できるようになった。

残念ながら音声通話は連続1時間、GPSを使いながらのセルラー通信は4時間と、バッテリー持続時間自体はそんなに長くはない。ただし、スマホ漬けの生活のなかで、1時間にしろ、4時間にしろ、スマホを持たずつながり続ける時間が作られること自体が、全く新しいことなのだ。

新たに追加された文字盤、エクスプローラーでは、モバイル通信時、電波強度のピクトが表示される

Appleは近々、Apple Musicのストリーミング再生を、Apple Watchのセルラー機能で実現する予定だ。そうなると、膨大な音楽ライブラリを、Apple WatchとAirPodsだけで楽しめるという最小構成が完成するのだ。

Appleは通話、メッセージ、Siri、Apple Musicと、いくつかの自社サービスについて、iPhoneなしで体験できるようにしてきた。今後、メッセージアプリ、ソーシャルメディア、ニュースアプリ、健康管理、メモアプリなど、様々なアプリが、Apple Watchのセルラー環境に適した機能を広げていくことになる。

Apple Watch単体でのセルラー通信は、ウェアラブルアプリの世界を大きく拡げる可能性を秘めており、9月22日の発売と同時に、体験できる可能性がより大きく膨らんでいく、非常に大きなインパクトがもたらされることになる。