アドビシステムズが、日本における「Adobe Experience Cloud」の取り組みを本格化する。

同社は、Adobe Creative CloudとAdobe Document Cloud、Adobe Experience Cloudの3つのクラウドサービスを持つが、「最も新しく、最もビジネスチャンスがあるのがAdobe Experience Cloud。ここには、今後も多くの投資を行っていく」と、米Adobe Systems 会長 兼 社長 兼 CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏は話す。

米Adobe Systems 会長 兼 社長 兼 CEO シャンタヌ・ナラヤン氏

Adobe Experience Cloudは、Adobe Marketing CloudやAdobe Advertising Cloud、Adobe Analytics Cloudなど、8つのソリューションで構成される包括的なクラウドサービス。「Adobe Sensei」のマシンラーニングと人工知能(AI)を活用し、Adobe Creative CloudやAdobe Document Cloudともシームレスに連携する。

Experience Cloudを重視した戦略自体は今年3月、米ネバダ州ラスベガスで開催された「Adobe Summit」で発表しており、日本での取り組みが注目されていた。

マーケティングのクラウドサービスがAdobeの"次"へ

Adobe Marketing Cloudを切り口に、クリエイティブに関するビジネス全体をサポートする環境を整えたアドビ。

「クリエイティブビジネスを変革させてきたアドビが、日本の企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させることができる。そして、クリエイティブの領域において、インスピレーションから、収益化までをサポートすることができる」(ナラヤン氏)

この数年、アドビの変革は劇的だ。クラウドビジネスへ大胆にシフトしただけでなく、同時にクリエイティブをビジネス視点で捉えた製品群を取り揃えることで、クリエイターだけでなく、マーケッターにも対象を拡大。今回のAdobe Experience Cloudにより、CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)などの経営層にもアプローチする体制を整えた。

クリエイティブという観点だけで捉えても、「今や、あらゆる媒体でアドビのソフトウェアが活用されている。たとえば、ミネラルウォーターのボトルのラベルにもアドビの技術が活用されている」(ナラヤン会長兼社長兼CEO)というほど、広く利用されている。だが、その地位に甘んずるところなく、アドビ自らがデジタルトランスフォーメーションを行ってきた結果が今の姿だといえよう。

そうしたアドビのビジネス拡大の取り組みという観点から見ても、今回のAdobe Experience Cloudの日本での本格展開は大きな意味を持つ。日本におけるAdobe Experience Cloudの事業本格化には2つのポイントがある。

ひとつは、コンサルティングサービスを提供する「デジタルストラテジーグループ」を、社内で新設することだ。アドビシステムズ 日本法人 代表取締役社長の佐分利ユージン氏は「グローバルで展開している組織であり、これを日本でも展開。日本では約10人体制でスタートする」と語る。