米国の大型土星探査機カッシーニが15日、13年間の観測任務を終える。機体は土星の大気圏に突入して消えるが、約45万点もの鮮明画像を撮影、二つの衛星に海があること明らかにするなど、数多くの素晴らしい観測成果を残してくれた。米航空宇宙局(NASA)によると、カッシー二は通信が途絶えた後間もなく大気圏で燃え尽きるが、直前まで大気の観測を行ない地上にデータを送ることを試みるという。

画像1 NASAが公開した任務終了間近のカッシーニの想像図(提供・NASA/JPL-Caltech)

画像2 カッシーニが4月に捉えた土星の渦状の大気(提供・NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

画像3 土星の輪の内側に向かうカッシーニの想像図(提供・NASA)

画像4 カッシーニが捉えた遠く離れた地球(中央やや左上部の白い点)(提供・NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

カッシーニは高さ約7メートル、幅約4メートル、重さ約6トンの大型土星探査機。1997年10月15日に米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられた。探査機の製造、打ち上げには 欧州宇宙機関(ESA)なども参加、協力した。機体には世界約80カ国の一般市民約61万人が土星への夢を託して寄せた署名も積まれた。金星や地球、木星上空でスイングバイを繰り返して2004年6月に土星上空に到達。土星の周りを回る探査機は初めてで、以来13年の長い間観測を続けた。

土星到達翌年の2005年にはカッシーニの子機ホイヘンスが最大の衛星タイタンに着陸。ここでの観測でタイタン表面に地球のように川や海があることや、窒素の大気の中でメタンの雨が降っていることなども明らかにした。

また、衛星エンケラドスに関する貴重なデータも地上に送り続け、NASAは2014年4月に「エンケラドスの分厚い氷の下には海が存在して微生物が存在する可能性がある」と、また今年4月には「海から水素が噴出しており、原始的な生物存在の環境になっている可能性がある」などとそれぞれ発表している。

このほか、土星の輪の形状は安定していると考えられていたが、ダイナミックに変化することも明らかになった。輪は土星の衛星が近くを通過すると短時間のうちに形を変えたり、衛星が放出した氷やちりで新たに輪が作られたりすることなども分かった。NASAは今年4月下旬、カッシーニが土星の輪をくぐり抜けて大気の画像を撮影することに成功した、と発表。渦状になった大気の鮮明画像を公開している。

NASAは運用を2回延長したが、燃料が残り少なくなったために今年4月からは「グランドフィナーレ」と名付けた任務で、土星と一番内側の輪の間を22回通り抜ける飛行を続けてきた。9月12日にタイタンの重力を利用して軌道を変更して大気圏突入に備えてきた。カッシーニは20年近く宇宙を飛行したことになる。

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