無線化をさらに推し進めたiPhone 8

続いて今日の本命、新型iPhoneだ。事前の噂通り、「iPhone 8」と「iPhone 8 Plus」が発表された。本体は背面が(iPhone 4のように)金属からガラスになったものの、基本的なデザインはiPhone 7を踏襲しており、サイドのフレームは丸みを帯びている。

背面がガラスになったのはiPhone 5s以来。カラーはスペースグレイ、シルバー、ゴールドの3色になり、ローズゴールドとピアノブラックが消えた

SoCには新型の「Apple A11 Bionic」を搭載。6コア構成になっており、高速な「性能コア」×2と、消費電力の小さな「効率コア」×4に分かれている。iPhone 7の「A10 Fusion」では性能コア×2、効率コア×2だったので、効率コアが増えて、省電力時(実質通常時)の作業がより高速になる計算だ。事実、A11 Bionicの効率コアはA10 Fusionより70%、性能コアは25%高速化しているという。またコア同士の協調を司るパフォーマンスコントローラーも第二世代になっており、マルチスレッドの作業を最大70%高速に処理できる。

過去最高の6コア構成になった「A11 Bionic」。最高性能よりも通常時の処理に影響する効率コアの速度が重視されているように思われる

また、Apple自身が設計した3コアのGPUが搭載されており、こちらもA10 Fusionより最大で30%高速化しているという。これまで歴代のiPhoneのGPUにはImagination TechnologiesのPowerVRシリーズが採用されてきたが、今回初めてその伝統が断ち切られたことになる。Apple製GPUの実力は現時点では未知数だが、Appleの主張が正しければ、現在スマートフォン用SoCとしては最強のQualcomm Snapdragon 835が搭載する「Adreno 540」に匹敵するか、これを上回ることになるだろう。このGPUは機械学習やOpenMLでも利用される。

カメラも改善されており、4K/60fps撮影や1080p HDの240fps撮影などに対応。撮影した画像を処理するISPもApple独自のものになり、よりノイズが少なく色再現が高い映像が撮影できるようになった。

ワイヤレス通信については、Wi-FiやBluetooth 5.0、LTE Advanced対応に加え、無接点充電にも対応。充電には「Qi」規格に対応したワイヤレス充電器が利用できる。もちろん、従来通りLightning端子によるワイヤードな充電も可能だ。なお、iPhone 7に引き続きイヤホンジャックもないが、これはLightning端子との変換アダプタが付属するので、これを使えば既存のイヤホンを利用できる。

業界標準の無接点給電技術である「Qi」に対応(バージョンは今の所不明)。Apple自身から来年、Apple WatchやAirPodsも充電できる「AirPower」充電台が登場予定だ

なお、NFC/FeliCa対応についてはiPhone 7と同様だが、海外仕様のiPhone 8やApple Watch Series 3でも日本でFeliCaが使えるようになっている。海外モデルを購入してSuicaが使えずに悔しい思いをする、といったことはこれでなくなるようだ。

全体に見て、iPhone 8 / 8 PlusはiPhone 7の正統進化モデルとして順調なアップデートぶりを見せている。後述する「iPhone X」に注目を奪われがちだが、価格帯から言っても一般ユーザー向けにはこちらが本命だろう。A11 Bionicプロセッサが持つ未知数な部分(GPU性能や互換性など)に若干の不安は残るが、基本的に周辺機器との相性やアプリの互換性などはこちらが上のはずだ。発売は9月22日からとなるが、例年通り大きなヒット作になるだろう。