一部報道では、KKRと産業革新機構、日本政策投資銀行の3組織が総額約2兆円を拠出して東芝メモリを買収し、WDはこの時点で資金拠出を含む買収行為には直接関与しない。一方で、将来に東芝メモリが上場した際には新規発行分の16%程度の株式を取得して議決権を得るという手法だ。

これは、東芝メモリ買収に際して世界の関連機関の承認を得やすくするためのもので、早期決着を必要とする東芝に一定の配慮を行った結果だ。なお、買収における資金拠出の代替案として四日市工場の(かつて東芝がSanDiskから買い取った)製造設備の買い戻しの提案もあるといい、いずれにせよ、最終的にWDの提案がどう判断されるかがポイントのようだ。

Wall Street Journalの報道によれば、こうした状況でも東芝経営陣の一部が、WD以外の交渉相手を望んでいるという声もあるようだ。実際、Bloombergなどは「(WDが組んでいる)銀行団やファンドは買収後のキャッシュアウトが狙い」というHon Hai側の声を紹介しており、Samsung対抗となるNANDフラッシュメモリ供給元の東芝を救済してサプライを安定させたいAppleなどの企業との連合で、いまもなお交渉の余地があることをアピールしている。

いずれにせよ、時間がない東芝にとっては現在最も有力な交渉をまとめることが最善であり、ほとんど選択肢がない状態だ。この行方は、9月13日の同社の正式発表に注目していてほしい。