東京医科歯科大学(TMDU)は8月31日、母動物低タンパク質給餌による胎生前期栄養ストレスを受けた仔動物は、生活習慣病に類する症状を発症する前の若齢仔動物であっても肝臓における絶食応答の一部が減弱することをつきとめたと発表した。

同成果は、東京医科歯科大学難治疾患研究所分子疫学分野 佐藤憲子准教授、東京医科大学疾 患モデル研究センター 須藤カツ子兼任講師、同大学低侵襲医療開発総合センター健康増進・先制医療応用部門 杉本昌弘教授らの研究グループによるもので8月29日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

妊娠期の母親の栄養状態は子どもの将来の生活習慣病発症に影響することが知られている。妊娠マウスに低タンパク質飼料を与えた場合、通常の飼育下で仔動物は脂肪肝などの生活習慣病様症状を発症するが、老齢にならないと顕在化しないため、因果関係の解明には、その時間的なギャップの大きさが障害となっている。

今回、同研究グループは、胎生期の栄養組成変化の仔動物への影響を調べる代表的なマウス実験モデルである母動物低タンパク質給餌モデルを用い、特に体外受精と胚移植によって低タンパク質給餌の時期を厳密に妊娠前期に限定する実験条件を設定。絶食/再摂食といった栄養エネルギー変化に対する応答を調べるため、肝臓のトランスクリプトーム、メタボロームプロファイルを網羅的に解析した。

この結果、自由摂食の定常状態では、母動物低タンパク質給餌群であっても仔動物に特段の変化は現れなかった一方で、仔動物を絶食させると、母動物低タンパク質給餌群では、絶食に応答して通常誘導される長鎖脂肪酸代謝関連遺伝子やストレス応答遺伝子の発現が低く、応答が減弱していることがわかった。さらに、絶食後再摂食時の中性脂肪プロファイルの差異として、中性脂肪を構成する長鎖脂肪酸の炭素鎖が長く不飽和度が高くなることが明らかになった。

同研究グループは今回の結果について、さらに詳細な解析が必要であるとしたうえで、肝臓絶食応答の減弱は、老齢期の疾患発症につながる前段階の代謝調節の乱れとして出現したものと考えられるとしており、生活習慣病の先制的な予防法の開発に役立つ可能性があるという。

今回の研究の概要 (出所:TMDU Webサイト)