The Qt Companyは8月31日、都内で事業戦略説明会を開催し、Qtが置かれている現状ならびに、日本市場での戦略、そして事業強化を図っているコンサルタントサービスの紹介などを行った。

同社の2016年における売上高は約3240万ユーロで、成長率は約20%と高い。そんな同社の成長を支えるのが、世界を取り巻く2つのトレンドだと、同社エグゼクティブ・ヴァイスプレジデントであるユハペッカ・ニエミ氏は語る。

1つ目のトレンドは、タッチスクリーンの適用範囲の拡大。スマートフォン(スマホ)での利用は当然だが、車載機器や家電、医療機器など、さまざまな分野でタッチ技術が活用されるようになっている。2つ目のトレンドは、1つ目の流れに沿ったもので、スマホでタッチ操作になれたユーザーが、同じようなユーザーエクスペリエンスを、そうした別の分野の機器にも求めるようになってきた、という点である。

Qtでは、そうした流れを受けて、カスタマが使いやすいエコシステムの構築に向け、Qtのソースコード開示も行ったりするなど、環境整備の強化を進めてきており、すでにユーザー数は100万人以上に達し、活用の範囲も、「ユーザーインタフェース(UI)が存在する場所にQtあり」ということで、自動車、ネットワークアナライザ、コーヒーメーカーやデジタルテレビなどの家電、医療機器、産業機器、スマートグリッドなど、幅広い領域に及んでいる。

また、技術開発も継続して行ってきており、近年では小型デバイス、例えばウェアラブル機器などに対応したり、3DやAR、ジェスチャー技術などへの対応も進めているとする。

現在サポートしているOSは11種類。ウェアラブルや3D、VRといった最新技術への対応も進められている

そうした同社の取り組みにおいて、日本は最重要市場という位置づけにあるという。その背景には、「従来は、デスクトップアプリケーションからの収入が多かったが、近年、広い意味での組込機器分野からの収入が増加傾向みある。そうした意味でも、組込業界において、トップクラスの技術や製品を有している企業が多い日本は重要な市場になりつつある」(同社ジャパンオフィス代表のダン・クー氏)という事情が存在する。

日本では、自動車、産業機械、ロボット、IoTなどの分野での成長が期待されているとのことで、中でも自動車関係では、OEMやティア1メーカーとの協力関係の強化を図っていくほか、産業機器やロボット分野ではクロスプラットフォーム開発プラットフォームの活用を推進していくとしている。「Qtの最大の特徴は、1つのテクノロジーで、すべてのユーザーがニーズに合わせたUIを実現できるという点。分野を超えて、さまざまな機器に応用展開が可能なため、その市場性は、ほかのUIに比べて高いと見ている」(同)とのことで、そうした特徴を武器に、日本市場に向けて、同社は以下の3本の柱を中核にした戦略を進めていくという。

  • Qt Japanの販売力強化
  • 開発支援、プロダクトの強化
  • パートナーシップの強化

販売力の強化という点については、同社は従来、パートナー企業を活用した販売を主としてきたが、今後に関しては、パートナーとの関係性は強めながらも、ターゲット市場におけるキーアカウントに対する自社による販売なども積極的に行っていくとしている。また開発支援という点では、専門エンジニアを通じた開発設計支援体制の構築を図っていくとするほか、パートナーシップの強化については、ローカルのエコシステム構築を強化することや、各種のパートナーとの連携強化などを図っていくとしており、これにより、2021年までに現在の売上高の3倍となる約1000万ドルを国内だけで目指すとしている。

Qtは組込機器からモバイル、デスクトップまで、すべての領域を1つのテクノロジーで対応することを可能とする

Qtの4つのビジネスモデル

日本市場に向けたQt Japanの3つの戦略

なお、Qt Japanとしては、今後、積極的な技術リリースのほか、イベントなどにも積極的に参加していくことで、Qtの実力と魅力を継続してアピールしていくことも同時に進めていくことで、日本地域における認知向上ならびにユーザー層の裾野拡大を図っていきたいとしている。

Qtの活用例。自動車のダッシュボードやスマートウォッチ、ロボットのUIなど、応用範囲は多岐にわたる