今後、さらなる活性化と透明性向上を

今後の各空港民営化プロセスにおいては、さらなる審査体制の整備が図られることは十分に期待できる。運営権対価額に関しては、過去仙台空港で最高額入札者が選定されなかったことに財務省から指摘があったり、羽田空港跡地第2ゾーンの開発では対価額評価点が50%になったことで企画提案内容が最低でも金額だけで勝ったとの逆の批判が出たりと、種々変遷をたどって今に至っている。

福岡空港民営化での選定条件では、対価額評価割合が30%となっている

今回、高松空港の対価額評価割合は20%、福岡空港では30%に上がっており、"勝つには数字を積むしかない"との傾向はさらに高まる懸念がある。その意味で、実行を確約させる設備投資の前提となるトラフィックの数値目標の審査・検証方法の整備等について、さらなる改善策が取られるよう願いたいものである。

他方、これから二次審査に向かう静岡空港の募集要項では、運営権対価の入札額を「滑走路等更新投資を全額負担する場合にそれを上回る額」と設定されており、単に運営権にいくら積むかではなく事業への総合的な投資額の一部として評価することとされた。これは空港投資の合理性を考えた方法であり、静岡県による選定ではあるが国の指導が入ったであろうことは想像に難くなく、今後、北海道7空港を始めとする国による審査基準にどう反映されるかを注視したい。

また、情報管理という点で、国に対応を求めたいのは人的な関係についてだ。国交省は今回の高松空港に応募し、今後の福岡、北海道に大きな意欲を示している企業から、航空局を含め、職員の出向を受け入れている。いかにチャイニーズウォールを厳しく設定していると言われても、出向者を送り出している企業が入札内容や審査情勢について有利な情報を得るのではないかという疑念が出されることも、ある意味当然と言えよう。

誰もが李下に冠を正さぬことを明示するためにも、応募企業からの出向受入を審査の期間前後は中断するか、出向を受け入れている企業には応募資格がない、また応募者へのアドバイス行為をすることは禁止する、といった措置を取ることが必要ではないだろうか。

筆者プロフィール: 武藤康史

航空ビジネスアドバイザー。大手エアラインから独立してスターフライヤーを創業。30年以上に航空会社経験をもとに、業界の異端児とも呼ばれる独自の経営感覚で国内外のアビエーション関係のビジネス創造を手がける。「航空業界をより経営目線で知り、理解してもらう」ことを目指し、航空ビジネスのコメンテーターとしても活躍している。スターフライヤー創業時のはなしは「航空会社のつくりかた」を参照。