安価ながらもデザイン、色へのこだわりなどで家電事業が伸びを見せているエスキュービズム。同社はITと自動車(中古車販売)、家電を三本柱として、いずれも売上規模が20億円程度を誇る。

そして家電事業はわずか3年前に立ち上げたばかりにもかかわらず急成長を遂げた。創業者で代表取締役社長の薮崎 敬祐氏に、家電事業における戦略、エスキュービズムの将来像について話を聞いた。

エスキュービズム 代表取締役社長 薮崎 敬祐氏

4年目でようやく黒字化

エスキュービズムはECサイト構築パッケージ「EC-Orange」やモバイルPOS「Orange Operation」などのIT事業を起点に、ECソリューションの強みを活かした中古車販売、ドロップシッピングサイトなどを手がけてきた。ドロップシッピングサイトで家電販売を行っていた流れから家電事業へと進出したが、当初は「LED水耕栽培キット」や「"肉じゃが"が作れるミキサー」といった独自色の強い家電製品を作っていた。しかし、「売るのに苦戦していました(笑)」(薮崎氏)。

そこで、現在も販売しているテレビなどのメインストリームの家電を取り扱うようになった。「価格を抑えつつ、単身世帯が伸びていることを背景に『ルーム家電』を徹底的に検証し、ニーズがあるのに商品数が少ない市場を狙うようにしました」(薮崎氏)

オリジナルの価値を作り出すことは多大な労力を必要とするが、既存の製品セグメントであれば消費者は"棚"から商品を選ぶ。誰かの目に止まれば、必ず商機は生まれるということを試して、改めて認識したと薮崎氏は話す。

「イノベーションという言葉が盛んに叫ばれていますが、研究所や大学の論文は既存の研究理論の引用が9割、99%。1%を付加するのが"イノベーション"なんです。近年ネットベンチャーが盛り上がりを見せていて、みんな"ゼロイチ"を追い求めますが、それは難しい。例えばAirbnbやUberが話題になっていますけど、彼らももうすぐ10年選手。一歩一歩の積み重ねが今に繋がっている。だから、既存のカテゴリであっても少しの試行錯誤を重ねることが大切だと思っています」(薮崎氏)

家電事業は4年目に入り、ようやく利益が出る体質になってきたという。「私の考えは4年目で利益が出るものであれば3年間の赤字をどう抑えるかで事業の成長にかけます。3年かからずに黒字化できるものは誰もが真似するし、最終的に利益を生み出せない。家電はハードウェアの産みの苦しみがあるし、誰もやりたがらない。だからこそ、リソースを投下したんです」(薮崎氏)

薮崎氏は、ネットがなければ家電はやっていないと話す。Web時代に昔の"電気屋さん"で有限だった棚が無限になったことで、寡占化していた家電市場に商機を見いだせるようになったという。棚が無限にあり、ユーザーがそれらを俯瞰できるようになったことで「消費者の細かいニーズを埋めることが、販売につながるようになった」(薮崎氏)。

実際、いわゆる総合家電メーカー以外に高級志向やおもしろ家電などのメーカー製品がここのところ多く見られるようになってきた。ただ、その中でも人気を集める競合他社とは明確にビジネスモデルが違うと薮崎氏は話す。

「販売価格を抑えつつ、高品質を謳うメーカーが人気ですが、彼らは耐久財を消費財に変えたイメージがあります。扇風機が1980円だったとして、それで数十万個のロットを用意して値段の"臨界点"を超えるイメージですよね。私たちはあくまでユーザーニーズのくみ取りがメイン。"なければならない"機能にフォーカスして、そこに私たちが考える価値をプラスするんです」(薮崎氏)