鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は、従来の弾性まくらぎ直結軌道と比べて施工が容易で低コストな「S型弾性まくらぎ直結軌道」を開発したことを発表した。

新開発されたS型弾直軌道の構造(出所:ニュースリリース※PDF)

まくらぎをゴム等の弾性材を介してコンクリート道床(支持構造)で支える「弾直軌道」は、列車走行時の音や振動を低減できることから主に都市部の高架橋等で使用されている。鉄道総研が平成10年に開発した「D型弾直軌道」は優れた防振性能から幅広く使用されているが、コンクリート道床の施工時において、煩雑な鉄筋配置作業と型枠の正確な位置調整に手間が掛かっていた。

今回、鉄道総研が新たに開発した「S型弾性まくらぎ直結軌道」は、弾直軌道の敷設コストを低減するとともに施工を容易にしたもの。せん断キー(Shear key:まくらぎ側面の突起)で横荷重を支える構造とすることで、コンクリート道床を従来の弾直軌道よりもスリム化し、材料費を低減している。

また、短繊維補強コンクリートを用いるとともに無筋のコンクリート道床に適した構造にすることで、ずれ止め筋以外の鉄筋が不要になった。さらに、型枠をまくらぎ端部とせん断キーに当てるだけでコンクリート道床の正確な形状が得られるようにすることで、型枠位置調整作業が簡略化されているという。

鉄道総研は、従来のD型弾性まくらぎ直結軌道(D型弾直軌道)と比較して軌道工事の工期を40%以上短縮できるとともに、コンクリート道床の施工コストを60%低減(軌道全体の敷設コストにして 20%低減)できると説明している。

なお、開発においては、実物大載荷試験やシミュレーション(非線形FEM解析)に基づく性能照査を行い、列車荷重に対して十分な耐力を有することを確認するとともに、モーターカー走行試験等によってD型弾直軌道と同等の基本性能を持つことを確認したという。なお、「S型弾性まくらぎ直結軌道」は平成28年末に鉄道事業者で実際に施工されており、今後半年以内に設計・施工の手引きをとりまとめさらに実用展開を図っていくとのことだ。