すっかり夏の風物詩となったフジテレビ系オムニバスドラマ『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2017』が、きょう19日(21:00~23:10)に放送される。番組がスタートして18年がたち、制作されたドラマは200本にもおよぶというが、ここまで長く愛される理由は何か。

番組の立ち上げからプロデュースするフジテレビの後藤博幸氏に話を聞くと、ドラマの現場で実際に起こった"ほんとにあった怖い話"も打ち明けてくれた。

『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2017』に出演する(左上から時計回りに)野村周平、遠藤憲一、杉咲花、北川景子=フジテレビ提供

――1999年に始まった『ほんとにあった怖い話』も今回で18年目になりました。どのような流れで立ち上がった番組なのでしょうか?

僕自身、中学生くらいまで学校や修学旅行で怖い話をみんなで順番にし合うのが大好きで、家に帰って風呂に入ると、背後が気になってゾクゾクするような感覚があったんです。その感じを出したくて作った企画なんですが、最初は深夜番組の企画書として、当時企画担当部長だった亀山(千広・前社長、現BSフジ社長)に出すと、企画書をバーンと投げられたんですね。それで「ダメか…」と思ったら、「バカ野郎! これはゴールデンだよ。企画書作り直してこい!」と言われて、そこからトントン拍子に進んで、これが初プロデュース作品になりました。

――初プロデュース作品が今も続いているというのは、すごいですよね。『ほん怖』がここまで長く愛される理由はなんでしょうか?

日本人、特に子供たちが、こういうホラーが好きなんだと思います。背後が気になってゾクゾクするとか、日本人の多くが一度は感じたことがある感覚みたいなものが、うまく伝わったのではないでしょうか。

――18年も経つと、映像技術もかなり進化していると思うのですが、『ほん怖』での表現も変わっているのですか?

『ほん怖』は、逆にアナログにこだわろうということで立ち上げた企画なんです。18年前も、CGが全盛になろうとする時代だったんですけど、そういったものは基本的に使わずに、現場で表現できる演出をやってきました。なぜそうするかというと、「ほんとにあった」と銘打っているとおり、このドラマは実際にあったことを描いてるからなんです。CGだと、実際になかったことでも表現できてしまうので、「ほんと」っぽさにつながらないと思うんですよね。

――実際に、これまでどんな演出をされてきたんですか?

生首が動く時は、人に首から下だけブルーのタイツを着せて動いてもらうとか、目が真っ白い幽霊が出てくる時は、大きな白いコンタクトレンズを入れてもらったりしました。目は相当痛いらしいですけど(笑)

――そうした苦労も、18年続く理由なんですね。ところでこういった作品を撮っていると、よく心霊現象が起こると言いますよね。『ほん怖』の現場でも、そんな現象はあるんですか?

僕はいわゆる霊感は無い方だと思ってるんですけど、何か発生すると『ほん怖』の現場のせいにされてしまう傾向はありますね(笑)。今回、心霊写真を紹介するコーナーを久しぶりにやるんですけど、研究者の方とどの写真を取り上げようか鑑定してもらって、「この写真は相当強烈だ」という話をした時に、打ち合わせ部屋の端からバチーン!と"ラップ音"がしたんです。研究者の方に言わせると、写真の影響だと言ってましたね。今回の番組では、その写真も公開しますよ。

心霊写真と言えば、立ち上げて2年目くらいの時に、エンドロールで使う心霊写真を20枚くらい選ぶために、束で家に持って帰ったんですよ。ただ、ロケ終わりで疲れ切ってすぐ寝てしまい、心霊写真を枕にした状態で朝を迎えてしまったんです。で、その日の現場で40度近い熱が出て、倒れて救急車で運ばれたということもありました。今となっては半分笑い話になっていますが(笑)

――それを笑い話にできる精神力がないと、18年も『ほん怖』のプロデューサーはできないですよね(笑)。さて、『ほん怖』といえば、ナビゲーターの稲垣吾郎さんの存在が欠かせません。

『ほん怖』が始まって3年くらいは、ただオムニバスドラマを重ねていただけだったんですよ。そこで、何か特徴を出したくて、怖いものを見た後にひと息つけるためのコーナーができないかと考えた時に、吾郎さんと子供たちが出演する「ほん怖クラブ」という空間を作ったんです。これによって、怖いものが苦手な人でも、最後まで我慢して見られるという意見もよく聞くんですよ。『世にも奇妙な物語』のタモリさんとは少し意味合いが違くて、怖いというストレスを緩和させる効果を持っていると思います。

――稲垣さんはクールなイメージがありますけど、結構怖がるリアクションをされますよね(笑)

そうですね。意外とああいう感じの方が素に近いんじゃないですかね。