設立3年目のベンチャーながら、独自の技術によりIoT向けネットワークの分野で大きな注目を集め、急成長を遂げてきたソラコム。そのソラコムが8月にKDDIの子会社となることが発表されたのだが、なぜソラコムは独自路線を貫くのではなく、たった3年で大手通信会社、しかもその中からKDDIを選んで子会社になったのだろうか。

事業拡大だけでないソラコムの狙い

去る8月2日、国内通信大手のKDDIが、通信系ベンチャー企業のソラコムを子会社化すると発表し、大きな驚きをもたらした。しかも一部報道によれば、その買収額は200億円規模とも伝えられており、もしこの数字が本当だとするならば、国内ベンチャー企業のM&Aとしてはかなり大規模な買収劇となる。

8月8日のKDDI・ソラコム共同会見より。IoTベンチャーとして注目されていたソラコムが、設立3年でKDDIの子会社になることを選んだのには大きな驚きがあった

2014年の設立と、まだ歴史が浅いソラコムに、KDDIが大規模な資金を費やして傘下に収めたのはなぜかというと、モバイル通信のコアネットワークをクラウド上に構築した「SORACOM vConnect Air」と、それを活用したIoT向け通信サービス「SORACOM Air」の存在にある。SORACOM Airはクラウドを活用したことで低価格かつ柔軟性のあるサービスを実現。それがまだIoTの実績に乏しく、小さい規模で事業をスタートさせたい企業のニーズにうまくマッチし、事業拡大を続けているのだ。

だがソラコムは、既に大企業の顧客を抱えるなど豊富な実績を持ち、単独で海外進出も果たすなど、順風満帆にビジネスを進めていた。それだけに、なぜこのタイミングでKDDIの傘下に入る道を選んだのか、疑問を抱く人も多いようだ。

8月8日に実施されたKDDIとソラコムの共同説明会において、ソラコム代表取締役社長の玉川憲氏は「ソラコム単独ではチャレンジだと感じた」点として、いくつかの課題を挙げている。その中には資金調達やグローバルでの事業拡大なども含まれているが、これらは急成長する多くのベンチャー企業が抱える課題でもある。

確かにKDDIの子会社となることで、それらの課題を一気に解消し、事業拡大に弾みをつけたい狙いは大きい。だがこの点はKDDIからの小規模出資による提携でもある程度補えたはずだ。あえて子会社化の道を選ぶには、それだけにとどまらない理由があるものと考えられる。