普段の運動不足や寝不足などにより血圧を正常に司る機能が弱っていても、起立性低血圧になりやすいとされている。ただ、「若い方が低血圧によって不調を訴える原因の多くは、自律神経の乱れからきます」と知久医師は話す。
自律神経の役割
私たちは普段から意識していなくても、交感神経が緊張して血管を収縮させたり、副交感神経が血管をリラックスさせたりすることで、血圧のバランスを保っている。起立性低血圧は、この自律神経のバランスの崩れなどから生じるとのこと。
例えば過度なストレスにさらされていると、血圧を上げる交感神経が常に優位に働く。するとバランスをとろうとして副交感神経が過剰に働いて血圧を下げてしまうため、急激な立ちくらみやめまいをきたし、ひどいときはその場で倒れてしまうことも。
「自律神経の乱れを整えるためには、規則正しい生活が大切です。適度な運動、バランスのよい食事、十分な睡眠をとることが必要です。また、ストレスや疲れがたまっているときに深呼吸やため息をするのも、交感神経の緊張を和らげるため対策の一つになります」
交感神経は、午前中と夕方にかけて2回ほど優位になり、昼食後や夜には副交感神経が優位になる。そのため、スポーツや仕事などの活動は午前中や夕方頃に行うほうが効率的。昼食後は体をリラックスした状態にさせておくのが理想的だ。短めの昼寝がとれるとベストだが、勤務中はなかなか難しい。少なくとも、昼休みの時間はゆっくり過ごすように心がけるのがよいと知久医師はアドバイスを送る。
また、自律神経の乱れを整えるために運動、食事、睡眠のそれぞれにおいて気をつけたほうがよいポイントをうかがった。
運動
「適度な運動」とは、一日20~30分の運動を少なくとも週3日間実施するのが理想的とのこと。「1駅余分に歩く」などでもよいそうだが、自然が豊かな公園など、緑の中で心地よさを体感して歩くほうが一層リラックス効果があるという。
食事
バランスのよい食事をするうえでは、体のエネルギー源である糖質・脂質・タンパク質をしっかりとり、ビタミンやミネラルも補充することが大事になってくる。
例えば、糖質は脳の活動を支えているため、低血糖になると頭が働かず生産性が著しく落ちてしまう。脂質は心臓の動きを支えており、良質な油、特に魚の油は効果的と言われている。そして、肉や魚などの動物性タンパク質や、大豆などの植物性タンパク質が基礎代謝を上げる筋肉を作るものであることは、広く知られているところだ。
睡眠
理想の睡眠時間は7~8時間くらいで、6時間未満だと心臓病などのさまざまな疾病リスクが上昇するとされている。また、「疲れているから」と長時間寝てしまうのも自律神経の乱れを引き起こすため逆効果だという。
「低血圧だから朝起きられないという方がいますが、低血圧と寝起きには明らかな因果関係はなく、慢性疲労や睡眠不足のほうが原因と考えられます。ただ、私たちは『寝だめ』ができないので、とれなかった睡眠の分としては30分くらいの昼寝などを取り入れるといいでしょう」