名古屋大学は、同大学大学院医学系研究科 整形外科学の大田剛広医員、西田佳弘准教授らの研究グループが、保険適応のある医療材料(リゾビスト、リジェノス)を組み合わせた温熱刺激により、ラットおよびウサギ動物モデルにおいて骨形成が促進されることを明らかにしたと発表した。この成果は7月18日、国際科学誌「PLOS ONE」電子版に掲載されました。

ラット骨欠損モデルにおける温熱治療による新規骨形成(出所:ニュースリリース※PDF)

骨腫瘍切除後や骨折後、また慢性の骨髄炎などの結果生じる骨欠損の治療には、自家骨移植の方法が広く用いられているが、自家骨の採取が困難な場合もあり、骨形成を促進するための新しい方法が求められている。

「温熱治療」は炎症性疾患や転移性腫瘍で以前から用いられ、ヒト間葉系幹細胞やいくつかの細胞株を用いた基礎実験においても、温熱刺激が骨芽細胞を活性化させアルカリフォスファターゼ活性を上昇し、骨形成マーカーを上昇させるという報告が散見されている。しかし、動物モデルにおいて温熱刺激による骨形成を評価した報告は稀で、ヒトでの使用が認められている材料を用いた報告はなかった。

研究グループは、ラットとウサギによる脛骨骨欠損モデルを作成の上、保険適応のある医療材料(リゾビスト、リジェノス)を移植し、交番磁場下に45度、15分間加温刺激するこ とによる骨形成を Micro-CTと組織学的に評価し、2種類の細胞株(MC3T3,ATDC5)にお いて温熱刺激による骨分化能を評価した。その結果、両動物モデルにおいて週1回 の温熱刺激が刺激開始後2週、4週時点ともに骨形成を促進することが示された。 対照的に週3回の温熱刺激は治療開始後1週、4週時点とも骨形成を促進しなかった。また、MC3T3 細胞株は温熱刺激によりALPの発現が亢進したが、ATDC5では明らかな変化が認められなかった。

これらの結果により、臨床応用可能な材料を用いた温熱刺激が、骨芽細胞を介して骨形成を促進することが示された。なお、明らかな副作用は認められなかった。適切な温熱刺激は骨形成を促進させると考えられるため、近い将来、骨欠損を生じた患者に対する骨形成促進を目的とした有効な治療の選択肢となる可能性が示唆された。