なぜデリバリー事業に進出したのか

LINEデリマでは集客をLINEが行い、実際のサービスは送客された先の出前館が行うといった形になる。ちょうど6月にスタートしたLINEショッピングと同じ構造だ。LINE自身は以前、iPhoneアプリからフードデリバリーや買い物代行を頼める「LINE WOW」というサービスを展開していたが、1年程度で終了した経緯がある。ではなぜ今、再びデリバリー事業に向かうのだろうか。

LINE WOWは高級店からのデリバリーが受けられるなど、サービスとしての魅力は高かったが、都市部でしか展開できなかった。一方、LINEデリマならパートナーと組むことで全国区で展開でき、LINEが持つユーザー規模と、パートナーのエリアカバレッジの相乗効果が期待できることになる。

LINEでO2O事業を統括する藤井英雄執行役員によれば、もともと出前館では利用者の55%が女性ユーザーと女性比率が高かったのだが、LINEデリマの事前テストでは、女性比率が実に72%にまで跳ね上がったという。パートナー側としては、これまでにないユーザー層の開拓が大いに期待できるというわけだ。

女性比率が高いのはLINEのヘビーユーザーに女性が多いことの表れと言えるだろう

また、夢の街の中村利江社長によれば、「出前館」は元々専門的なサイトでコンバージョン率もリピーターも多かったが、知名度が低いことで伸び悩んでいたという。そこをLINEのユーザー集客力でカバーすることで互いに補完しあえることになる。ユーザーが増えることで危惧されたコンバージョン率の低下も工夫することで元に近い数値が出るようになったということで、今の所メリットのほうが大きいようだ。

LINEデリマでは将来、生鮮品や日用雑貨、医薬品へとカテゴリーを拡大したいとしている。生鮮品などのデリバリーという点では、たとえばAmazonのPrime Nowなどがあるが、倉庫のある場所から一定のエリアしか対応できないPrime Nowと違い、提携店が近くにあれば対応できるLINEデリマの日用品デリバリーは、全国展開の面で有利だ。特に一人暮らしで車を持っていない都市部の若者などは、普段使っているLINE内からの宅配を便利に活用するだろう。

デリバリー市場全体は2兆円以上の規模があるというが、O2O事業で2018年に流通額1000億円を目指すLINEにとって、LINEデリマはある意味、LINEショッピングよりも目に見えた効果を期待しやすいサービスになるかもしれない。LINE WOW撤退から2年、LINEの再挑戦がどのような形で身を結ぶか、期待したい。