鹿島は、微少発破による建物基礎の解体工法「鹿島マイクロブラスティング(MB)工法」を、より深い場所まで一度に発破できるよう改良した「パイルMB工法」を開発し、このほど都内再開発工事の大型既存杭解体工事に実適用し、騒音・振動の低減、解体工期の削減に大きな効果があることを確認したことを発表した。

パイルMB工法による発破後、地上に露出した既存杭(出所:鹿島ニュースリリース)

都市部の再開発工事における地下の狭あいな場所での解体工事では、小型重機による非効率的な作業となり、また大型の基礎構造物を解体する場合は油圧ブレーカなどを用いた打撃による作業が必要で、騒音や振動など周辺環境への影響が大いという課題があった。

2011年に産業技術総合研究所、カヤク・ジャパンが共同開発した「鹿島MB工法」は、微少量の爆薬を用いて構造物を局所的に発破し、あらかじめ「ひび割れ」を入れることで、効率的に解体する画期的な工法である。発破時の一瞬の騒音はあるものの、油圧ブレーカによる継続的な騒音と比較すれば周辺環境への影響を大きく軽減できる。

鹿島MB工法では、爆発のエネルギーを効果的に構造物に伝えるため、爆薬を装填する孔を細く設定しているが、細い径で長く穿孔することは技術的に難しく、地中深くまでの発破が必要な既存杭への適用は限定的であった。

新たに開発された「パイルMB工法」では、地中深くまで穿孔可能な太い径(φ65mm)でも発破の効果が変わらないよう、孔に水を充填することで爆発エネルギーのロスを抑えるという。これにより、鹿島MB工法の約5~6倍の深さまで一度に発破することが可能となり、効率的、かつ低騒音・低振動で建物基礎を解体する画期的な工法が、既存杭の解体にまで幅広く適用可能となった。

パイルMB工法による既存杭解体工事の作業手順(出所:鹿島ニュースリリース)

今回、パイルMB工法を、都内の代表的な再開発工事である「日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業(A地区)」の既存杭解体工事に適用したという。大口径(φ1800mm以上)の既存杭25本の解体に適用し、発破によりひび割れを入れた後の破砕作業において、油圧ブレーカを継続的に用いる在来工法より騒音・振動とも大幅に低減されたことはもちろん、地中で発破することにより発破時の一瞬の騒音においても改善がみられた。また、解体作業全体にかかる時間も、在来工法による想定より短縮されたということだ。