言語聴覚士の仕事において、患者さん一人ひとりの症状に合わせた訓練を考案することは何よりも大切です。春日居サイバーナイフ・リハビリ病院で働く安富朋子さんも、毎日、より良い訓練をするための工夫をしています。

こちらの番外編では、安富さんが行う訓練の裏側や、学生時代の勉強のコツについてお話を伺いました。

■100円ショップに訓練のヒントがある!?

――言語聴覚士になるには、大学を経てさらに国家資格を取る必要がありますよね。学生時代はたくさん勉強をされたかと思いますが、高校生に向けて勉強のコツを教えてください。
 
私が大切だと思うのは、自分が集中しやすい環境を見つけることです。人によっては、喫茶店だったり、学校の自習室だったりするかもしれませんね。ちなみに私は、試験勉強をするときは、図書館を利用するようにしていました。

また、勉強を一緒に頑張る友達の存在も励みになります。支え合いながらもライバルとして切磋琢磨する存在は、大人になっても大切です。私は、友達と問題を出し合ったり、休憩時間にはランチに出かけて息抜きをしたりしていました。継続して勉強をするのはとても大変ですが、メリハリをつけてやると良いと思いますよ。

 
――このお仕事ならではの「休日あるある」や、ついプライベートでもやってしまうことがあれば教えてください。

雑貨屋さんに行ったとき、つい訓練に使えるグッズがないか探してしまうことですね。意外に思うかもしれませんが、日常のいたるところに、患者さんに訓練を楽しんでもらうためのヒントがあるんですよ。

例えば、おもちゃの硬貨をお金の計算の訓練に使ったり、巻笛(息を吹くと伸びる笛のおもちゃ)で遊ぶことが呼吸の訓練になったりもします。また、訓練に使用するものをしまう箱を、華やかで可愛らしいものに変えるだけで、患者さんのモチベーションが上がることだってあるんです。それがうれしくて、休日でも「何かないかな〜」と辺りを見回してしまいます。雑貨屋さんめぐりは、やめられませんね(笑)。
 
 

■毎日の触れ合いの中での気づきが大事

――このお仕事では、心理学の知識が役立つ場面もあると聞きました。患者さんとのやり取りの中で、実感したことはありますか。

言葉を発せない患者さんの気持ちを読み取らなければならないので、心理学の知識を持っていることはとても大切です。しかし、個人的には、心理学の知識よりも、実際に患者さんが発するサインの方が、気持ちを読み取る上では役立つ場面が多いと感じます。とはいえ、目が泳ぐ人がいたり、ずっと手遊びをする人がいたりと、全員に必ず当てはまるサインはありません。長い時間を一緒に過ごすうちに、初対面では気付かないような小さな変化を感じ取れるようになっていきますが、それこそが患者さんの気持ちを読み取るための第一歩だと思うんです。
 
 

■まずは全力で理解しようとする姿勢が大切

――最後に、お仕事の中で、一番の思い出や達成感を感じたエピソードについて教えてください。

今でも思い返すのは、私が新人だったころに担当した患者さんとの出会いです。当時はまだ、全く言葉が出ない人を前にして関わることに、恐怖心を抱いてしまいました。すると、その方も、私が怖がっていることを敏感に察して、心を閉ざしてしまったんです。しかし、そんなときに先輩から「あなたが悩んでいる以上に、その方は悩み、苦しんでいるんだよ」という言葉をいただき、「私が落ち込んでいる場合ではない!」とハッとしました。

その後、患者さんの指差すもの、視線、表情の全てに神経を研ぎ澄まし、患者さんが言いたいことをくみ取れた瞬間は、涙が出たことを覚えています。このときの経験がきっかけで、理解しようと全力で努力することこそが、大切だと気付いたのです。
 
 
言語や飲食に症状が出た患者さんを、そばで支える言語聴覚士の仕事。安富さんのお話しから、患者さんに少しでも前向きな気持ちで訓練に取り組んでもらうため、日々奮闘している言語聴覚士の裏側を知ることができました。

「人の役に立てる仕事がしたい」「人の気持ちに寄り添った仕事に就きたい」と考えている方は、ぜひ言語聴覚士の仕事にも注目してみてはいかがでしょうか? 
 
 
【profile】春日居サイバーナイフ・リハビリ病院 言語聴覚士 安富朋子
【取材協力】医療法人景雲会 春日居サイバーナイフ・リハビリ病院