東北大学大学院生命科学研究科の渡辺正夫教授、高田美信技術専門職員らの研究グループは、大阪教育大学、奈良先端科学技術大学院大学、東京大学、三重大学、チューリッヒ大学(スイス)、横浜市立大学、忠南大学(韓国)との共同研究で、同種にも拘わらず、日本とトルコという離れた地域由来のアブラナ同士に生じる不和合現象を支配する、めしべ側と花粉側のそれぞれ他者を認識する遺伝子セットを明らかにした。

同研究グループは、他者を認識して受粉・受精を防ぐこの仕組みが、自己花粉の認識に関わる遺伝子セットの「遺伝子重複」と「相互の機能喪失」によって生じたと考えた。

自己認識遺伝子の遺伝子重複により、SUI1とPUI1が生み出され、相互に喪失

まず、アブラナ祖先種において起こった自家不和合性の自己認識遺伝子の遺伝子重複により、SUI1遺伝子とPUI1遺伝子が生み出され、その後、トルコではSUI1遺伝子、日本ではPUI1遺伝子が相互に機能を喪失した。

PUI1とSUI1が結合し、シグナルが伝達。花粉拒絶に至る

次に、自己認識遺伝子の多型性により、トルコと日本の間では本来交雑可能なはずだが、機能的なPUI1とSUI1が出会う組合せでは不和合となる。一側性不和合性を引き起こす仕組みのモデルとしては、トルコ由来花粉に付着しているPUI1が、受粉時に日本由来めしべの乳頭細胞上の受容体SUI1と結合し、そのシグナルが伝達されて花粉拒絶に至った。

これらの成果は、植物の交雑を人工的に制御する分野に新しい知見を与え、アブラナ科野菜の品種改良への応用が期待できる。

本成果は、英国時間2017年6月27日、英科学誌Natureの姉妹誌「Nature Plants」(電子版)に掲載された。本研究は文部科学省科学研究費補助金、日本学術振興会科学研究費、植物科学最先端研究拠点ネットワークの支援を受けて行われた。