同人誌『怪獣倶楽部』創刊号の表紙(C)怪獣倶楽部TM

日本にまだインターネットもスマホも存在しなかった1970年代。かつて少年時代に見た「特撮・怪獣映画」の衝撃が忘れられないまま成長した青年たちは、いつしか共通の思いを持つ者同士で集まるようになっていった。その集まりの名は「怪獣倶楽部」と呼ばれた。

2017年6月に全4話を放送した『怪獣倶楽部~空想特撮青春記~』は、1975年に発行された実在する同人誌『怪獣倶楽部』をベースにした、怪獣に青春をかけた若者たちのドラマである。毎回『ウルトラマン』『ウルトラセブン』の名作エピソードをテーマにして、作品研究同人誌を作る若者たちの情熱的なやりとりや、それぞれのキャラクターが織りなすコミカルな人間模様などが描かれる。

ドラマスタッフは、『PUFFと怪獣倶楽部の時代』(著:中島紳介)をもとにメンバーの取材を行い、ドラマとして70年代当時に怪獣映画や特撮ヒーロー作品を愛し、作品研究に情熱を燃やした者たちの姿を生き生きと描き出すよう努めている。円谷プロの協力により、創刊号(第1話)ではメトロン星人、第2号ではガッツ星人、第3号ではゼットン、第4号ではゴース星人といった「ウルトラマン」シリーズの人気キャラクターが"メンバーにしか見えない"存在として姿を見せていることも、大いに話題となった。

実際に『怪獣倶楽部』という同人誌が発行されたのは1975年。円谷プロ作品でいえば、『ウルトラマンレオ』が終了を迎えた時期にあたる。しかし、同人誌として形を残す以前から「怪獣倶楽部」のメンバーは集まり、後にさまざまな形で「怪獣」や「特撮映画」というジャンルを後世に残す役割を担う人物たちが定期的に会合を行って、あふれ出る特撮・怪獣への思いを語りあっていたのだ。ここでは、「怪獣倶楽部」の成り立ちをよく知るメンバー(西脇博光氏、金田益実氏、原口智生氏)にお集まりいただき、ドラマとはひと味違う当時の事情、および70年代後半に巻き起こった「第三次怪獣ブーム」の実情などをうかがった。

取材者(秋田)は、1977~1979年に『月刊コロコロコミック』(小学館)のウルトラ漫画(内山まもる氏の『ザ・ウルトラマン』)や、『ファンタスティックコレクションNo.2 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマン』(朝日ソノラマ)、『ウルトラマン大百科』(ケイブンシャ)といった雑誌・ムック・書籍類や、『ゴジラ オリジナル・サウンドトラック』(東宝レコード)、『ウルトラオリジナルBGMシリーズ』(キングレコード)といった音盤商品などの直撃を受けてしまい、それ以来怪獣ファンの道からすっかり抜け出せなくなってしまった「第三次怪獣ブーム世代」の一人である。それまでは子ども向け絵本の延長でしかなかった特撮・怪獣関連の書籍に、マニアックともいえる作品リスト、設定資料再録や作品研究記事、関係者インタビューなどを加え始めたのが、ほかでもない「怪獣倶楽部」メンバー諸氏なのであった。