繰り返しになるが、Appleは本気で、iPadをパーソナル向けのメインのコンピュータとしていこうとしている。Macはアプリ開発やクリエイティブプロのための道具であるが、そうではない家庭や職場、教育で利用するコンピュータはiPadがふさわしい、と考えているのだ。

しかし、まだまだ人々の間で、パソコンがタブレットの上位に存在している、という認識に変化がないという状況がある。

Appleは、iPad Proに、より軽い本体、処理性能、ディスプレイの品質、ペン型デバイスといったハードウェア上の優位性を与え、iOS 11でもソフトウェア面で、Macを上回る体験を与えてくれる存在に仕立て上げようとしている。こういった環境が整えられることで、アプリ開発者も、PCやMac以上の体験をiPadに対して提供していくことが期待される。

なんらかのタイミングで、突然、MacではなくiPad Proがメインマシンになった、という人が増え始めるのではないか、と予測することができよう。今回のWWDC 2017では、パソコンの代替としてのiPadというアイディアに対し、布石を打つ様子が伺えた。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura