東北大学などは6月23日、直径5nmの3次元窒化インジウムガリウム/窒化ガリウム(InGaN/GaN)量子ドットを作製することに成功したと発表した。

同成果は、東北大学材料科学高等研究所および流体科学研究所の寒川誠二教授、肥後昭男助教(研究当時、現・東京大学大規模集積システム設計教育研究センター)、東北大学金属材料研究所 谷川智之講師、北海道大学大学院情報科学研究科 村山明宏教授、高山純一技術職員、北見工業大学 木場隆之助教らの研究グループによるもので、6月21日付けの国際科学誌「ACS Photonics」に掲載された。

現状のリソグラフィ技術で光源やレンズ系の設計において22nmよりも微細なパターンを形成するためには、技術的・経済的に大きな壁がある。またnmスケールの構造形成におけるプラズマエッチングでは、プラズマからの紫外線照射による表面欠陥生成が課題となる。一方、ボトムアップ法で量子ドットを形成する手法としては、格子ひずみを利用した自己組織的な量子ドット作製法が一般的だが、寸法のばらつきを十分に抑えることができなかったり、ドットの密度に限界があったりするなどの課題があった。

今回、同研究グループは、有機金属気相成長装置(MOVPE)を用いて作製したInGaN/GaNのウェハをバイオテンプレート極限加工法により超低損傷中性粒子ビームエッチングを実現することで、量子効果を示す厚さ2nm、直径5nm程度の量子円盤構造を積層した高さ30nm程度のナノピラー構造を、無欠陥に、均一に、高密度に、等間隔で2次元配置できることを示した。

さらにフォトルミネッセンス法により量子ドットの発光および発光強度温度依存性を測定したところ、トップダウン加工により作製された量子ナノディスクとしては初めて、従来の窒化物量子井戸構造の100倍の内部量子効率を確認した。

同研究グループによると、すでに大手装置メーカーと装置化への検討も進んでいるという。今後は実用化に向けてさらに研究を進めていく考えだ。

バイオテンプレートと中性粒子ビームを用いた量子ドット作製技術 (出所:東北大Webサイト)