モーターの反応速度がアイサイトを進化させる

クルマの電動化が進むと、なぜアイサイトの進化が究極の域に達するのか。それを説明するため、自動運転の鍵となる「認知・判断・操作」の各段階について考えてみたい。

現状、スバルはアイサイトにより、「認知」と「判断」で高い水準に到達しており、「操作」についてもツーリングアシストでの自然な、しかも確実な走行性能の実現ができている。しかし、既存のエンジンに比べモーターは、作動の指示に対して圧倒的な速さでそれを実行する能力がある。エンジンでは、どうしても超えられない作動遅れが残るのである。

実際、日産は自動運転の試作車をEVの「リーフ」で製作している。こうなると、アイサイトの優位性をさらに維持、前進させるためには、1日も早い電動車両の実現がスバルにとって不可欠になってくる。

電動スバル車の登場はいつごろか

現状、スバルは2019年にプラグインハイブリッド車(PHV)を、たぶん米国を中心に市場導入し始め、次いで2021年をめどにEVを市販しそうだ。ことにEVは、客室空間を大きくとるため床下にリチウムイオンバッテリーを搭載するので、スバルが言う水平対向エンジンによる低重心を、今以上に実現可能となる。

2017年3月期決算でクルマの電動化に注力する方針を示したスバルの吉永泰之社長

また、モーターを前後用に2個、場合によっては各タイヤ用に4個使うことで、4輪駆動、すなわちスバルの言うところのAWDも実現できる。そして、モーターの応答の早さをいかせば、高次元の操縦安定性を作り込むことも可能なのである。あえて言えば、それがわかっていてなぜ早くEVをやらないのかとさえ思うほどだ。

しかし、実はスバルは、三菱自動車工業「i-MiEV」発売と同時期に、「プラグインステラ」という軽自動車のEVを市場に投入しているし、その前段階としては、2003年の東京モーターショーに「R1e」というEVコンセプトカーを出展しているのだ。EVの加速や走り味のよさをしっかり開発していたのである。そして、プラグインステラは、あえてバッテリー搭載量を減らし、走行距離の長さより軽快で力強い、しかも低重心による安定性に優れた走りのよさを特徴としていた。

「プラグインステラ」(左)と「R1e」

ところが、軽自動車を自社開発しなくなり、日産との提携を止め、トヨタ自動車と提携を結ぶことで、スバルのEV開発は途絶えてしまった。そこを今、スバルは必死に取り返そうとしている。同社のブランドメッセージである「安心と愉しさ」は、アイサイトとEVの組み合わせによって完成されるものと確信する。