室屋義秀選手の劇的な優勝も記憶に新しい「レッドブル エアレース ワールドチャンピオンシップ 千葉2017」。実は今回、本大会でシリーズを通して公式タイムキーパーを務めるウオッチブランド「ハミルトン」のご厚意により、プレスエリアから決勝戦(6月4日)の撮影を行うことができた。

会場に持ち込んだレンズは、価格と性能のバランスで人気の超望遠レンズ2本。ここでは、「SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporary」でのレビューと作例をお届けしたい。

掲載の作例はクリックで拡大表示。さらに拡大写真の右下「原寸大画像を見る」をクリックすると、作例の元データをそのまま表示する。

最大400mmの超望遠レンズが、このサイズ! この価格!?

まずはレンズの概略から。筆者の行きつけのカメラ店で聞いた話では、このレンズ、ショップの仕入れ担当者が商品の確保に苦労するほどの人気とのこと。ちなみに、店頭実勢価格は8万円前後(2017年6月現在。筆者調べ)。春の運動会シーズンに加え、先月までシグマがキャッシュバックキャンペーンを行っていたことも、人気に拍車をかけたのだろう。

レンズ自体の仕様も魅力的。100-400mmという贅沢な焦点距離ながら、全長約260mm(最大時)、フィルター径は67mmというコンパクトさ。今回は焦点距離を稼ぐ目的もあってAPS-C機(キヤノン EOS 70D)に装着して使用したが、35mm換算で160-640mm相当とはとても思えないサイズのシステムにすることができた。三脚座は付かないが、このサイズならそもそも不要。手持ちでガンガン振り回したくなるレンズだ。筆者自身、腕力と体力に自信のあるほうでは決してないが、丸1日の撮影をこなした翌日も筋肉痛にはならなかった。

重量は1,160g。手に持った感じは、まるで70-300mm F4-5.6程度

フィルター径は67mm。レンズ構成は15群21枚

撮影距離の指標は窓に表示される。最短撮影距離は160cm

スイッチ類は、上からフォーカスモード、フォーカスリミット、手振れ補正、カスタム設定。手振れ補正は撮影中に効果を実感できるほどではなかったが、スイッチを切り替えながらレンズを動かしてみると、動作していることがわかる

携帯時にレンズが伸びないためのレンズロック機構。スイッチ後部に白マークが出ているときはロック中

レンズフードが付属。もう少し長めでも良い気がする

400mm位置までズームした状態。直進機構付きなので、レンズフードを引っ張って繰り出すこともできる

今回の撮影機材。400mm(テレ端)まで伸ばした状態でもこのサイズ

ただ、ことレッドブルエアレース千葉で使用するには、それでも焦点距離がやや不足している感も否めない。それは作例からも感じ取っていただけると思う。これについてはプレスエリアがコースの最左端にあることも関係している。

というのも、画的に映えるスタート/フィニッシュゲートやパイロンの間を縫ってハイGターン(急上昇180度ターン)といった見せ場から遠いため、エアレーサーをアップで捉えることができないからだ。むしろ一般観覧エリアからの撮影のほうが、映えるシーンをより寄った視点で狙いやすいだろう(最近の2,000万画素を超えるデジタル一眼であれば、トリミングしてしまうのも手ではあるが)。

そんな事情もあり、今回は多くの作例を400mm(640mm相当)で撮影している。望遠レンズはテレ側になるほど描写が甘くなる傾向があるので、これはできれば避けたかったのが本音だ。しかも、レッドブルエアレース千葉では、この場所ゆえの障壁が存在する。

1/1600秒 f/8 400mm ISO400
零戦里帰りプロジェクトの一環として、レストアされた本物の零戦が会場上空を飛行した

その障壁とは、まず、6月4日千葉市の最高気温が26°だったこと。日中は日焼けするほどの強烈な日差しによって海水が蒸発し、レンズと被写体の間に空気の層ができる。そのせいで、輪郭のシャープや色のコントラストが失われてしまうのだ。そして最大の障壁は、エアレーサーの機体から噴射されるスモーク。これが、次第に空に滞留し、霞がかかったような画にしてしまうのだ。

さらに、昼過ぎまでは海側からの太陽光で逆光となり、多くの角度で機体のディテールが潰れてしまう。今年のレッドブルエアレースではご存知のようにレストアされた零戦も飛行したが、逆光の空に飛ぶ濃緑色の機体は被写体としてもかなり手強かった。