名古屋大学(名大)は6月19日、新しい二元系の強磁性窒化鉄と強磁性窒化コバルトを発見したと発表した。

同成果は、名古屋大学大学院工学研究科 長谷川正教授、丹羽健准教授、曽田一雄教授らの研究グループによるもので、5月19日付けの米国科学誌「Inorganic Chemistry」オンライン版に掲載された。

鉄やコバルトの酸化物は古くから磁性材料として知られ、多くの研究がなされてきた。一方で、これらの窒化物は注目されながらも、その合成が容易でないために酸化物に比べて研究は進展していない。特に、二元系の単純な新しい窒化鉄や窒化コバルトの発見は近年なされていなかった。

今回、同研究グループは、高圧高温超臨界流体を利用した高圧合成法を独自に開発。金属と窒素のみを直接反応させるという単純な化学反応を用いて難窒化金属を容易に窒化させることに成功した。同手法を金属鉄と金属コバルトに適用したところ、窒素を多量に含んだ新しい二元系の窒化鉄と窒化コバルト(ヒ化ニッケル型のFeNとCoNおよびマーカサイト型CoN2など)を形成することがわかった。

さらに、放射光X線回折測定を用いた精密結晶構造解析と第一原理計算による電子構造解析の結果、これらの窒化鉄と窒化コバルトは窒素に富む化合物であるにもかかわらず電気伝導性であり、それぞれ3.4µB、0.6µB、1.2µBの磁気モーメントを有する強磁性を示すことが明らかになった。

同研究グループは、今回の成果について、今後の新しい磁性材料の開発につながることが期待されると説明している。

合成された金属窒化物の結晶構造とその特徴。ZnS-type、NiAs-type、Marcasite-typeはそれぞれ、硫化亜鉛型、ヒ化ニッケル型、マーカサイト型を示している (出所:名大Webサイト)