Qualcommは6月20日、都内で会見を開き、同社の音声ならびに音楽分野に向けた新たな取り組みとして、6月16日(米国時間)に発表した5つの新プラットフォームに関する説明を行った。

説明を行ったQualcomm, Senior Vice President and General Manager, Voice & MusicのAnthony Murray氏

近年、音声/音楽(映像含む)のニーズは、スマートフォン(スマホ)市場の拡大に併せて、従来のPCで行われていたようなダウンロード方式から、ストリーミング方式へと主流が移ってきている。また、ワイヤレス技術の進歩に伴うワイヤレスヘッドホンなどを中心とした音質改善もあり、製品側としても、BOMコストの削減やさらなる薄型化の実現などに向けたイヤホンジャックの廃止などが積極的に進められるようになってきた。半導体にも、こうしたニーズに対応する技術開発が求められるようになってきており、例えばより高精度なアルゴリズムに対応するためにDSPの処理性能などの向上などが必要とされていた。

さらに、耳につけるインテリジェント機器「ヒアラブル(hearable)」の市場も徐々にだが立ち上がりつつあり、半導体デバイスには、上記のような高性能化に加え、小型化、低消費電力化なども求められるようになってきた。

そうしたニーズに対応することを目指すのが今回同社が発表した5つのプラットフォームとなる。

Qualcommが発表した新たな5つのオーディオプラットフォーム

1つ目はBluetooth Audio Platformの最新世代となる「CSRA68100」。同社はこれまで、フラッシュ内蔵のプレミアムセグメントの製品と、ROMベースのミドルレンジ、ローエンド、ウルトラローエンド製品各種を提供してきたが、CSRA68100は、このプレミアムセグメントの最新世代品となり、16MBのフラッシュメモリを搭載する。前世代の「CSR8675」が、CPU、DSPともに1コアであったものをそれぞれ2コア化(CPUの動作周波数は80MHzから120MHzに、DSPはKalimbaコアは変更ないが120MHzから240MHzにそれぞれ引き上げられている)。処理性能を4倍に高めたほか、1つのコアをBluetoothの処理に、もう1コアをカスタマのニーズに合わせた用途に、といったカスタマイズが可能であり、さまざまな要件に対応することが可能となったという。

Bluetooth Audio PlatformのロードマップとCSRA68100の概要

2つ目は、Bluetooth Audio Platformのミドルレンジとローエンドをカバーするエントリーレベル製品「QCC3xxxファミリ」で、3001/3002/3003/3004/3005の5製品が提供される。ROMベースで提供され(外部フラッシュメモリは64MBまで対応)、カスタマのニーズに応じたカスタマイズをQualcomm側で施して提供ことで差別化を提供していくとしている(CPUクロックは80MHz、DSPはKalimba)。

「QCC3xxxファミリ」の概要

3つ目はUSB Type-C対応オーディオSoC「WHS9420/9410」。イヤホンジャックを廃止しつつ、ヘッドホンなどとの有線接続ニーズに対応することを可能にするもので、WHS9410がエントリ向け、WHS9420がハイエンド向けとなっており、WHS9420はサンプルレート192kHz/24bitへの対応が可能となっている。

「WHS9420/9410」の概要

4つ目は「Smart Audio Platform」。同プラットフォームのメインとなるのが「APQ8017」および「APQ8009」の2製品。2製品ともに「スマートスピーカー」「サウンドバー」「ネットワークオーディオ」といった分野への適用を想定したマルチコアARMベース+Qualcomm Hexagon DSP製品で、さまざまなユースケースへの対応に向け、キーワード検知やボイスUIなどの機能が統合されている。いずれも28nm LPプロセスで製造され、APQ8009がローエンド品で、4コアCortex-A7(最大1.3GHz動作)、LPDDR2対応、APQ8017がハイエンド品で4コアCortex-A53(最大1.4GHz動作)、LPDDR3対応となっているほか、Qualcomm Adreno GPUや802.11a/b/g/n/ac Wave2、Qualcomm Quick Charge 2.0 technologyなども搭載されている。

「Smart Audio Platform」の概要

そして5つ目が次世代「DDFA(Direct Digital Feedback Amplifier)」技術となる「CSRA6220」。従来のDDFAは2チップ構成であり、技術力の高いトップティアの限られたメーカーのみが活用できていた状況を鑑み、オーディオ品質を維持しながら、1チップ化を達成することで、周辺回路のシンプル化やBOMコストの低減などを実現可能としたものとなる。これにより、Smart Audio Platformなどと連携させることで、入力から出力まで高音質を維持したソリューションを提供することが可能となることから、同社では、より幅広い分野でのDDFAの活用が期待できるようになると説明しており、これを武器に今後、さらなるすそ野の拡大が期待されるワイヤレス音声/音楽市場で確固たるポジションを構築したいとしている。

次世代DDFA技術対応SoC「CSRA6220」の概要