歯が痛いときのNG行為を医師が解説

体に何らかの痛みが生じたら、医療機関を受診するのが普通だろう。ただ、もしも抜き差しならない状況に置かれていれば、すぐに医師のもとを訪れることはかなわない。

そのような際は自分で痛みを何とかしようと対処しがちだが、時にはかえって逆効果となってしまうこともある。素人の"禁忌行為"は、後の治療行為を難しくさせる可能性を秘めているため、細心の注意が必要だ。

今回は、M.I.H.O.矯正歯科クリニックの今村美穂医師に「歯が痛いときにしてはいけない禁止行為」についてうかがった。

運動や入浴で痛みが増す恐れ

歯痛にさいなまれた際に誤った行動をしてしまうと、痛みがよけいにひどくなる恐れがある。歯の痛みは大人でも耐えられないケースがあるが、その痛みをさらに増大させるとなれば、まさに"禁忌行為"だろう。

では、実際のところはどういった行動がNGなのか。今村医師は血行をよくする行為全般は痛みを誘発する恐れがあると話す。

「歯根の中の小さな歯髄腔という管の中に『歯髄神経』と呼ばれる神経があるのですが、その神経が細菌に感染することで歯の痛みが起きます。その際、その神経の炎症を助けようと白血球などの抗炎症細胞が集まってきますが、神経の存在する歯髄腔は小さく細いです。そのため拍動性の圧がかかり、痛みを発します」

血行の循環をよくすることは、血液の流れが活発になることを意味している。すると、歯髄腔の中の神経にますます圧がかかり、痛みが増加するというわけだ。

血行がよくなる主な行為は以下の通り。

■飲酒……アルコールで気分が気持ちよくなれば痛みがまぎれそうな気もするが、血の巡りがよくなるため痛みが増す公算が大きくなる。どうしても飲酒しないといけないのであれば、痛みがしない側で飲むように。

■喫煙……気分を落ち着かせるための一服は飲酒同様、痛みを和らげてくれそうで実は逆効果を招く行為だ。ヘビースモーカーの人は医師に診察してもらうまで、喫煙を我慢した方がよい。

■運動……激しい運動は血圧を上げるため、控えた方が無難だろう。

■入浴……半身浴で浴槽につかり、たっぷりと汗をかく――。お風呂に入ることでリラックスやダイエットといった効果も期待できそうだが、こちらもやはり血行がよくなってしまう。どうしても体の汚れを落としたければシャワーにしよう。

「いくらストレスを感じていても、タバコは唾液量を減らして唾液が持つ自浄作用効果を薄めるので止めてください。睡眠で体を休めることによる自己免疫を期待したいので、睡眠不足や食事を抜くこともよくありません。もし食事が摂(と)れないときは、マルチビタミン剤などのサプリメントを飲み、自己免疫を下げないように心がけてください」