AppleはWWDC 2017で、最新のiPhone・iPad向けOSとなるiOS 11を発表した。既に開発者向けプレビューが公開されており、6月下旬には、一般ユーザーも登録の上、パブリックベータ版を試すことができるようになる。

iOS 11では、Siriの発展、NFC活用などなど様々な新機能が追加されるが、目立つのは、機械学習や拡張現実といった新しいアプリのためのAPI、新デザインのコントロールセンター、ロック画面と通知の統合、App Storeの新デザインなどが挙げられる。これらに関しても、次回以降の記事で触れていきたい。

今回は、カメラ機能にフォーカスして、iOS 11の発展について考えていこう。

AppleはWWDC 2017の中で「世界最大」というキーワードを使っていたのが印象的だ。Androidに比べてインストールベースが小さなiOSプラットホームでも、ARや機械学習などについては、世界最大の存在と言える。ハードとソフトの両輪での発展によるもので、開発者にとって、最新のアプリを作るプラットホームとしてふさわしい存在であり続けている。 プレゼンでは「世界最大」とは言わなかったが、iPhoneは確実に、世界最大のカメラプラットホームだ。基調講演では1兆枚の写真がiPhoneで撮影されており、写真として楽しまれるだけでなく、メッセージやSNSなどでシェアされていることがスライドで報告された。流通しうる1兆枚の写真が作られ続けているのである。

1兆枚の写真がiPhoneで撮影されているとのこと

基調講演ではまた、iPhoneやMacにおける写真やビデオのファイルの形式の変更をアナウンスしている。いずれも、同じクオリティのファイルを半分のファイル容量で保存できる、非常に効率の良い新しい圧縮方式を採用することになる。

写真に関しては、「HEIF」(High Efficiency Image Format)、ビデオに関しては「HEVC」(High Efficiency Video Coding、H.265)へと切り替わる。英語を見れば、さほどヒネった名前ではなく、名称からその方式の特徴が分るわけではない。もっとも、HEIFは2013年にMoving Picture Experts Group(MPEG)によって策定されたMPEG-H Part 12で定義されており、Appleの独自規格ではない。

HEIFの特徴は、ファイルサイズの縮小だけではなく、複数のメディアファイルを1つにまとめることが可能だというところにもある。iPhoneの機能で言えば、大量の写真を連写するバーストモードや、写真とビデオの組み合わせだったLive Photosを、1つのファイルとして扱うことができるようになる。またフル解像度のHEIFフォーマットの写真とサムネイル用の小さなJPEGをあらかじめ用意しておくこともできる。

長くiPhoneを使っていると、あるいはクラウドへの写真の保存を行っていると、どうしてもその空き容量の逼迫が問題になってくる。単純に考えて、iPhoneで撮影する写真やビデオが半分の容量になることが期待でき、これは撮ったものを管理する「カメラ」として、非常に大きな性能向上となる。

写真を誰かに送信する際には、その場でJPEGに変換されて送信されるため、iPhoneやMac以外のプラットホームのデバイスで受信しても問題なく表示されることになるだろう。