F5 ネットワークスジャパンは6月14日、都内のホテルでプライベートイベント「F5 Agility Tokyo 2017」を開催。今回のテーマは、「求められるビジネス改革、求められるアプリケーション基盤の進化」だ。

午前中のゼネラルセッションでは、「F5 Vision and Strategy~クラウドがもたらす複雑化。問われるアプリケーション基盤の在り方~」と題して、F5ネットワークスジャパン 代表執行役員社長 古舘 正清氏や、米F5 Networks プレジデント兼最高経営責任者(CEO) フランソワ・ロコー=ドノ(Francois Locoh-Donou)氏が講演を行った。

最初に登壇した古舘氏は、同社の取り組みに説明。

F5ネットワークスジャパン 代表執行役員社長 古舘 正清氏

冒頭同氏は、「最近はお客様がパブリッククラウドをよく使うようになり、アプリ環境が複雑になっている。しかも、マルチクラウドで展開されている。そのため、お客様は、『クラウドセキュリティポリシーのコントロールが欠如』、『アプリの健全性のトランザクションを把握するのが困難なため、どうオーケストレーションしていけばよいのかわからない』、『IT部門とビジネス部門のさらなる連携が求められる』、『クラウドロックイン』という4つの課題に直面している。そのため、同じセキュリティポリシーで制御できるポータビリティを持ったハイブリッド環境、マルチクラウド環境が重要だ。F5はそういった環境を提供しようとしている」と、現状のパブリッククラウド利用における課題を説明。

パブリッククラウド利用における課題

そして、グローバルでの同社のアプリケーションサービスの利用状況を示し、「DDoS、Webアプリのファイアウォール導入率は低く、お客様はまだ、アプリに対するセキュリティ対策ができていない。また、シングルサインオン、グローバルサーバ負荷分散の導入も低く、BIG-IPの能力を使い切っていない。今後は、BIG-IPをフル活用して、可用性を高めてほしい。そのためのお手伝いを、われわれはもっとしていきたい」と、さらにBIG-IP利用促進をパートナーと行っていくとアピールした。

グローバルでのアプリケーションサービスの利用状況

日本における重点施策について同氏は、「プライベートクラウド、パイブリッドクラウド&マルチクラウド、セキュリティにフォーカスしている」と語り、国内では、昨年ユーザー会を発足させ、事例の共有を行っているほか、クラウド/セキュリティ インフラアセスメント、ジャパンテクノロジーセンター開設による検証環境の整備、日本品質の開発プロセスへのフィードバックなど、日本に根ざした展開を紹介した。

日本における重点施策

続いて、3カ月前に就任した米F5 Networks プレジデント兼最高経営責任者(CEO) フランソワ・ロコー=ドノ(Francois Locoh-Donou)氏が登場し、変革の重要性を語った。

米F5 Networks プレジデント兼最高経営責任者(CEO) フランソワ・ロコー=ドノ(Francois Locoh-Donou)氏

同氏は「変化は最初は大変だが、変化の中では機会が生まれている。そのためには、今まで持っていたものを手放し、最初の一歩を踏み出す必要がある。それによって、新しい機会が出てくる。今後は、クラウド、IoT、セキュリティのを組み合わせることで、今後20年を形づくる変化が生まれる」と述べ、クラウド、IoT、セキュリティというITにおける大きな変化に対応することの重要性を強調。

そして、「われわれはアプリケーション、セキュリティを十分理解しており、業界の誰よりもスケール感をもって対応できる。これまで、F5はアプリケーション界のリーダーであり、今後20年もリーダーであり続ける決意をしている。そのために、アプリケーションをどこでも、どういった形でも使えるようにしていく。そして、アプリケーションをオンプレミスでも様々なクラウドでも、ソフトウェアでもハードウェアでも使えるように、開発を加速していく」とアピールした。

最後に登壇した、製品・マーケティングの責任者である米F5 Networks シニア バイス プレジデント、プロダクト・マネジメント 兼 プロダクト・マーケティング サンギータ・アナンド(Sangeeta Anand)氏は、同社のクラウド戦略を説明した。

米F5 Networks シニア バイス プレジデント、プロダクト・マネジメント 兼 プロダクト・マーケティング サンギータ・アナンド(Sangeeta Anand)氏

同氏は、アプリケーションの世界に変化を起こす要素として、DevOps、モビリティ、クラウドという3つがあるが、変化にかかわらず、アプリケーションは高速、スマート、安全でなければならないと指摘。

そして、「オンプレミスはコンロールが効くというメリットがあるが、それが変化しており、データセンターがグローバル化し、複数のアプリケーションアーキテクチャー環境に移行している。それが、いま取り組まなければならない課題だ。われわれのビジョンは自由に、どこでも、どんなアプリケーションでも、セキュリティとアプリケーションサービスに一貫性を持たせ、実行させることだ。そのためにロードマップを作っている」語り、これを実現するための新サービス/製品として、6月12日に発表したマルチクラウド環境に対応したアプリケーションサービス展開を支援する7つのソリューション/製品を紹介した。

新たなクラウドソリューションとしては、F5 BIG-IP仮想アプライアンス(BIG-IP VE)のGoogle Cloud Platformの対応、Amazon Web Services、Azure、Googleに対応したクラウドテンプレートの提供、マーケットプレイスから簡単に素早くF5のセキュリティサービスを実装できるサービスを提供開始した。

Google Cloud Platformの対応では、25Mbpsから5Gbpsまでのインスタンスを、「BYOL(Bring Your Own License)方式」で実装できる。

クラウドテンプレートの提供では、パブリッククラウドへのF5アプリケーションサービスの実装を、よりシンプルに行えるようにする。

F5のセキュリティサービスでは、WAFやOffice 365認証連携といった機能が事前設定された仮想アプライアンス(BIG-IP VE)を、パブリッククラウドのマーケットプレイスから直接実装できる。

また、プライベートクラウドソリューションとしては、OpenStackターンキーパッケージにより、一連のF5ソリューションを、プライベートクラウドでも動かせるようにし、OpenStackで構成されたプライベートクラウド環境の簡素化と自動化を行う。

そして、クラウド環境へのアプリケーションサービスを可能にする製品としては、コンテナ環境で、アプリケーションの開発やテスト、スケーリングを行うことが可能な「アプリケーションサービスプロキシ」、コンテナ上で稼働するアプリケーションに対するアプリケーションサービスの実装を容易にするとともに、KubernetesやMesos/Marathonなどが提供するシステム管理/オーケストレーション機能と連携することができる「コンテナコネクタ」、パブリッククラウド上に実装されたF5サービスのインスタンスを自動的に見つけ出し、企業のデータセンターやホスティング環境とパブリッククラウドを安全に接続し、アプリケーションサービスを提供する「アプリケーションコネクタ」を提供する。

アプリケーションサービス展開を支援する7つのソリューション/製品