新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト(NEDOプロジェクト)において、エンルート、産業技術総合研究所(産総研)、日立製作所、八千代エンジニヤリングが、ドローンに地下電磁探査センサーをつり下げ、土砂災害時に地中に埋没した車両を空中から探査するシステムを開発したことを発表した。

開発されたシステムによる土砂災害現場での埋没車両の探査イメージ(出所:NEDO Webサイト)

土砂災害では、土砂に埋没した車両の迅速な探査が必要だが、二次災害の懸念もあり、人の立ち入りが難しい状況での車両探査作業が困難となっている。そこで近年、災害現場で活用できるドローンの開発が盛んに行われている。

ドローンは、空撮や測量、農薬散布、インフラ点検の分野での利用が進んでいるが、今後は人の活動が困難な災害現場などにおいても、ドローンを用いて埋没車両位置を探査できる技術の開発が期待されている。

そこで、NEDOのプロジェクトでは、産総研、エンルート、日立製作所、八千代エンジニヤリングは、土砂災害および火山災害時に無人航空機や無人車両を用いて地形調査や地質調査を実施する技術の開発を行っており、地面に触れずに地下の様子を調査する「電磁探査法」を用いた、ドローンによる地質調査を目指すという。

今回、プロジェクトの一環として、埋没車両の探査にドローンを利用した技術の開発を進め、車両を埋設した実験サイトをもつ日本建設機械施工協会施工技術総合研究所(以下、施工総研)において検証実験を実施した。

ドローンとセンサー部からなるドローンつり下げ型の電磁探査により、地下に埋没した金属物体の探査ができる、埋没車両位置特定システムを開発した。これは、長さ1.6mの地下電磁探査センサー、その対地高度をモニタリングする超音波距離センサー、位置情報収集用のGPS信号受信器、無線通信装置で構成される。

(左)ドローンつり下げ型電磁探査システムによる航行計測のようす/(右)センサー部(出所:NEDO Webサイト)

同システムを用いて、軽自動車2台を地下1.5mと3.0mに埋設し、埋没車両探査を模擬できる、施工総研の実験サイトにて実証実験を行った。実験では、ドローンにセンサー部をつり下げ、航行速度約2m/s、センサー部の対地高度を約1mで航行させて計測するドローン航行計測を、探査対象エリアを比較的粗い飛行間隔で網羅的に探査する広域探査と、それにより抽出された特定のエリアをより細かな飛行間隔で詳細に探査する精密探査の2種類の実験を実施した。

まず、広域ドローン航行計測で約70m×35mの実験サイト全域を測定したところ、以前建設されていた実験施設の地下に残された構造物は検知できたものの、地下1.5mの埋没車両はわずかに把握できる程度であった。

そこで、精密ドローン航行計測を行い、埋没車両によると思われるデータを検知したエリアを細かく航行した結果、地下1.5mの埋没車両を明瞭に検出でき、地下3.0mの埋没車両もわずかながら検出できたという。

今後、同システムの更なる改良を行うとともに、斜面などの実現場に近い環境下での実験を重ね、実用化を進めることで、人の立ち入りが困難な災害現場での埋没車両を探査する技術として、救出活動の迅速化に貢献することを目指していくということだ。