Microsoftは5月29日(現地時間)、同社研究機関であるMicrosoft ResearchによるAI(人工知能)の実社会に対する取り組みを公式ブログで報告した。Microsoft ResearchはリアルワールドでAIを可能にするアルゴリズムと技術構造を明らかにするため、ロボットやサイバー物理システムの文脈で「構造」「シミュレーション」「安全性」の3要素を重視しなければならないと説明する。

Microsoft Researchによるドローン用シミュレータ「AirSim」。空間の奥行きや簡略化した映像をリアルタイムで生成している(画像はすべて公式ブログより抜粋)

まず「構造」は、交通ルールや自然の法則など実社会に存在する、統計および世界的な論理構造を使用することで、AIエージェントが現実世界で直面する不確実性の問題に役立つ。例えばMicrosoft Researchによるプロジェクト「No-Regret Replanning under uncertainty」では、データが不足している状態でもロボットの経路を正しく決定するため、統計構造の活用方法を研究しているという。従来の統計モデルや論理モデルによるアプローチでは難しいものの、同プロジェクト「Learning to Gather Information via Imitation(https://www.microsoft.com/en-us/research/publication/learning-gather-information-via-imitation/)」の成果を用いれば、複数の問題領域に対してアルゴリズムを一般化できると同研究所は説明する。

電柱や脚立など異なる構造物を学習データセット化し、その学習結果を用いてドローンの飛行経路などを自動設定する

「シミュレーション」は、Microsoft Researchのシミュレーションプロジェクト「AirSim」を利用し、仮想現実と実世界のギャップを埋めることを目標に定めている。我々が困難な状況で行動する際、行動の結果を考えるといった脳内シミュレーションを行うように、AIエージェントもシミュレーションを繰り返しながらアクションの実行と検証を行うというもの。

AirSimのコアコンポーネントとシステム構造

そして「安全性」はAIエージェントが積極的に安全な行動を選択する仕組みを指す。実現するためにはML(機械学習)と知覚システム、直線探索の客観的基準の1つWolfeアルゴリズムを用いて、AIエージェントと我々を含む生物や環境、両方の観点から安全性を考慮し、行動を決定する。Microsoft Researchはドローンにおける操縦者のFPV(First Person View)視点を取り上げ、「一見不可能な屋内環境を通してデバイスを操縦できる。この能力を模倣し、人間に優るAIエージェントを構造・シミュレーション・安全性の側面から実現を目指す」(Microsoft Research, Ashish Kapoor氏)と説明した。

ロボットは不完全な概念(赤色および青色の線)を踏まえて、安全な軌道(黒色の線)を決定する

阿久津良和(Cactus)