アメリカ航空宇宙局(NASA)は、土星の北極にある巨大な六角形の最新カラー映像を公開した。土星探査機カッシーニが今年4月25日に撮影したもので、2013年6月撮影の映像と比べると、六角形の色が青から黄色へと大きく変化していることがわかる。

土星の北極の巨大六角形。左が2013年、右が今回撮影された映像。青色から黄色に変色している(出所:NASA)

カッシーニは先月、土星の環をくぐりぬけ、土星本体への接近探査を行うミッションを成功させたが、今回の映像はこのミッションに入る直前に撮影されたもの。撮影時の土星中心までの距離は72万5000kmから23万kmで、高度を変えながらの連続撮影を行った。撮影にはカッシーニの広角カメラを使用。赤、緑、青の波長フィルターによって天然色の映像が作り出されている。

土星の六角形は、一辺の長さが約1万3800kmで、直径が地球の2倍以上という巨大なもの。2013年の映像では六角形の領域全体が青く見えていたが、今回の映像では、ほとんどの部分が黄色っぽいスモッグに覆われており、極点の渦だけに青色が残っている。

土星の北半球は、5月24日に夏至を迎え、現在は昼の時間が最も長い時期にあたっている。六角形が黄色く変色するのは、太陽の紫外線が当たることによって光化学スモッグが生成されるためであると考えられている。中心部に青色が残っている理由に関しては2つの仮説があり、ひとつは、この部分が土星の春から夏にかけて太陽の紫外線が最後に当たる領域であるため、スモッグ粒子の変色がまだ起こっていないとする説。もうひとつは、六角形内部の渦巻きの構造が地球上の台風に似ているとする仮説で、台風の目で発生する下向きの気流によって大気がクリアに保たれるため、中心部に青色が残るとする。

土星に夏至が訪れるのは地球の時間で15年に一度のことであり、この時期の土星の季節的変化を観察することが、カッシーニの最終ミッションの主な目標となっている。今年9月にはカッシーニ本体が土星の大気圏に突入する予定であり、2004年に土星軌道に到達して以来続いてきた探査活動がすべて終了することになる。