われわれが享受できるクラウドサービスの裏側にはそれを支えるデータセンターたちの進化がある。5月10日から13日まで開催されたJapan IT WEEK 春 2017では、データセンターに関連するソリューションも数多く展示されていた。

今回はイベントの中でもサーバーラックや冷却システム、耐震装置まで、サーバーに関するテクノロジーが一堂に会する第9回 データセンター展の中から、複数の展示品とわかりやすいデモ用模型やオリジナルキャラクターの登場で終日、活気のあった「NTTファシリティーズ」のブースについてレポートする。

「NTTファシリティーズ」ブース全景

NTTファシリティーズは、ビルやオフィスにおける省エネルギーやコスト削減をICTや長い歴史を持つ建築技術、太陽光発電設備や運用など持続可能な社会の実現を掲げ取り組むNTTのグループ企業だ。同社は、現在エネルギー事業、建築事業と融合したソリューションを展開しており、省エネ・低コストで高信頼なデータセンターソリューション、高機能ビルの維持管理からライフサイクルコストの管理まで行う高機能ビルマネジメント、環境共生技術、ICT、BCPなどの技術を活用した高環境性能・長寿命の建物設計ソリューション「GreenITy Building」などを展開している。

今回、同社ブースのメイン展示品は、データセンター用途建築物向け冷却システム「Munters DCiE」とデータセンター用水冷空調機「CyberAir 3」。そして、最近のトレンドである高電圧直流(HVDC)給電システム「FR-HVシリーズ」、もう一つ目を引いたのが、建物安全度判定サポートシステム「揺れモニ」。同社のブースでは、これ以外にも複数の製品が大規模に展示されており、見ごたえがあった。

「NTTファシリティーズ」ブースでは、複数の冷却システムなどが直接展示されている他、社員によるセミナーも行われていた。

今回のブースのコンセプトは、「高密度・高発熱化対応」。これついて会場の担当者は、「サーバーの技術革新によって、データセンターの高密度化が起こり、それに伴って高発熱化の問題が発生してきた」とデータセンターという規模でも高発熱化が課題となってきている現状を教えてくれた。この問題の解決について、同社は、二つの方向からの解決を提案しているという。

その一つが、設備の機能を上げていくこと。それに対する解決策が同社の水冷空調機「CyberAir 3」、高電圧直流(HVDC)給電システム「FR-HVシリーズ」。そして、二つ目がそれでも足りないという顧客向けに建物そのものを高効率で冷却する方法だ。それが同社の提案するソリューション「Munters DCiE」だ。

担当者によれば、「現在の多くのサーバールームは、2000年代の設計で現在のサーバーの高密度化、高熱化に対応できていない」という。このソリューションは、そういった状況に対する同社の解答ともいえる製品だ。

「Munters DCiE」のシステム模型。赤い熱の流れと冷たい冷気の流れが一目でわかる。

「Munters DCiE」で提供されるソリューションは、通常のサーバールームに空調機を並べて冷やすという方法ではなく、空調機を建物の外に出し、部屋の中央部分に熱流を集めて上部の水冷式ポリマー熱交換機に送り集中冷却し、冷風を部屋に戻し空気を循環させるというもの。

冷却システムは、スウェーデンのMunters社の間接蒸発冷却式空調システム「Oasis」を日本でいち早く導入したものだという。NTTファシリティーズは、同システムを日本仕様に変えたのが「Munters DCiE」だ。水冷システムは、ポリマー熱交換器を採用しているので、金属腐食やスケールの付着などがなくメンテナンスフリーなのことも特長となる。

外気条件に合わせて、冬季トライモードや中間期ウェットモード、夏季ウェット+補助熱源モードなど複数のモードを切り替えて運用できる。バルコニーにも設置可能で都市型のデータセンターにも対応している。

「Munters DCiE」のポリマー熱交換機の実物。水冷式で冷却コイルなどの補助熱源は、夏季モード以外には極力使用しない設計になっており、高い省エネルギー性能を持つ

もう一つの同社の展示品であるサーバーを個別に冷却する、水冷空調機「CyberAir 3」。これは、データセンター空調で名高いドイツSTULZ社の「CyberAir 3」を日本市場向けの専用仕様としてNTTファシリティーズが調整して展開する製品だ。

同製品の特長は他社の同スペックの製品に比べて高さ、奥行き、幅合わせて14%の省スペース化と独自の高効率ECファンにより、消費電力を約50%削減するなど、省スペース、省エネルギーを実現していることだ。日本市場用に耐震性も高められており、2014年販売以来着実にシェアを伸ばしているという。加えて、同社は省スペースによる空調機の増設と高密度化によって発生する建築物の床加重対策として、軽量のアルミで作成した二重床システム「FIT Floor」も用意している。

水冷空調機「CyberAir 3」。空調機下の黄色い部分と上部の赤い棒部分までが一般的な空調機の横幅と奥行きと高さを表している。一目でかなり省スペース化が図られていることがわかる。左下のアルミ製の床部分が二重床システム「FIT Floor」

世界的なトレンドとなっているという高電圧直流へ対応するHVDC(高電圧直流)給電システム「FR-HVシリーズ」だ。高電圧直流給電システムは、電力会社より直接、高電圧直流で給電を受けることで、電力変換を通常の交流給電の4回に対して2回に削減することができる。変換装置の小型化とシンプル化を実現し、省エネルギーと省スペース、低コストをもたらすという。現在、大手サーバーベンダーも直流に対応した製品を発表しつつあり、今後期待できる分野になるだろう。

高電圧直流(HVDC)給電システム「FR-HVシリーズ」。交流システムに比べて変換ロスを約40%抑えることができる

展示製品で特に気になったのが建物安全度判定サポートシステム「揺れモニ」だ。同システムは、地震などの災害が発生した場合、フロアーに設置したセンサーにより災害発生直後に建物がどういった動きをしたか、どのような損害が発生したかを視覚化するシステムだ。

実際に地震が発生した場合、設置されたセンサーの情報をリアルタイムでモニターに表示。建物の状況を可視化する。そして、一分後に建物がどれだけダメージを受けたかを判定、右側の折れ線グラフを見て退避の判断をすることができるというもの。

建物安全度判定サポートシステム「揺れモニ」。実際のデモサンプルでは、ボタンを押すと建物の模型が揺れる(左)。すると上部のモニターに現在の建物の状況がリアルタイムで表示されている。水色、黄、赤に分けて表示されているグラフで危険度がわかる(右)

震度5弱の判定、1階で危険反応。退避警告が出ている

今回、NTTファシリティーズのブースでは、同社のメインキャラクター「エコロじい」が執事姿で、所狭しと動きまわり同社の活動をアピールしていた。キャラクターは、"エコをこよなく愛するおじいさん"という設定。同社のCMなどでも登場する人気キャラクターだ。ブースの執事ということで、燕尾服を着て登場し、堅く尖ったイメージになりがちなハード系のブースに和やかな雰囲気をもたらしていた。

燕尾服を着て登場し、堅く尖ったイメージになりがちなハード系のブースに和やかな雰囲気をもたらしていた「エコロじい」