3つ目の理由は、iPhone 6が良いスマートフォン過ぎる、という点だ。

iPhone 7は、iPhone 6に比べて、大幅な処理性能、グラフィックス性能の向上、そして大幅なバッテリー持続時間の改善がある。カメラも、iPhone 7 Plusではデュアル化され、ポートレートモードなどの新しい機能を楽しめる。

しかし、iPhone 6も、つい最近まで過去のモデルとして併売されており、最新のiOS 10をインストールするのも可能だ。現役のデバイスと言っても過言ではない。長い寿命を誇る新しいデバイスの販売低迷について、Appleは既に経験していることがある。それはiPadだ。iPadは2014年第1四半期以降、販売が低迷しており、2017年第2四半期には、第2四半期としては2012年以来の1,000万台割れを引き起こしている。このiPadも、例えば2011年発売のiPad 2が、最新のiOSはインストールできないまでも、まだまだ活躍でき、「十分使えるデバイス」であるのだ。

iPadの家庭、企業、学校の教室などでの用途は、ウェブ閲覧、SNS、写真やビデオの再生、ちょっとした文書作成、ビデオ編集などが中心だ。これぐらいであれば、iPad 2でもiPad miniでも、それらの処理をいまだに良くこなしてくれる。良いデバイス過ぎて、用途が拡大しなければ、買い換える理由が見つからない。中国におけるiPhone 6は、iPadと同じような状態に陥っているのではないか、と考えられる。

iPhoneでできることはここ2年の間にも大きく増えているはずだ。最新のハードウェアで最高のパフォーマンスを発揮するゲームや、iSight/FaceTimeカメラ性能を生かしたアプリ、3D Touchの操作性、Touch IDの認証スピードの向上、防水など、様々な進化を遂げている。

しかし、中国市場のスマートフォンにとって重要なことが、最新のハードウェアやiOSに依存しないことであるならば、前述のiPadシンドロームの発生を支持する理由となる。 中国市場で現在最も大きな影響力を発揮しているのはWeChatだ。

メッセージングは、面倒な中国語入力を避けて、音声でやりとりをしており、コミュニケーションから決済までをカバーする。また、世界中の航空会社や金融機関、メディアなどが、中国のユーザーの取り込みを行う最大の窓口として、サービスをWeChat上に展開している。最新のデバイスやOSでなくても、WeChatさえ動けば、中国におけるスマホライフの基本は十分におさえられる、というわけだ。そう考えたとき、iPhone 6でWeChatのパフォーマンスに不満が出るかどうかは、愚問といえる。もちろん答えはNoだ。