Appleは4月25日に、全世界495店舗のApple Storeで、Apple製品を用いた実践的な講座「Today at Apple」を開催することを発表した。これまで、製品の体験と購買、サポート拠点としての機能を強く打ち出してきたApple Storeの性格に変化を与えることになる。

Appleのリテール担当シニアバイスプレジデント、アンジェラ・アーレンツは、Apple Storeでコミュニティに学びやインスピレーションのきっかけを提供する場でありたいとコメントしている。また、目指すのは「現代版の公共広場」というキーワードも使った。

公共広場はフォーラム(Forum、フォルム)のことで、古代ローマの発展した都市において商業や政治・司法、社会活動が行われるオープンスペースを指す。Appleが現代のフォーラムを目指すとの目標を掲げたことは、同社の現在の状況を良く反映している。

2016年5月、ちょうど1年ほど前にオープンしたサンフランシスコのApple Union Square。観光名所、ユニオンスクエアに面した最新の直営店の2階には、巨大なディスプレイと車座になって座ることができる木のボックス型の椅子が配置された「フォーラム」という場がそこには設置されていた。

2016年5月にオープンした新世代店舗となるApple Union Square。穏やかに晴れた日は巨大なガラスの扉を開き、さわやかなサンフランシスコの気候を店舗内でも楽しめるようにしている。Today at Appleが行われる2Fに設置されたフォーラムのディスプレイは、外から見ることもできる

旧来のApple Storeのデザインでは、店舗の規模にもよるが、シアターが設置されており、Apple製品に関するプレゼンテーションや使い方のセミナーなどが開催されてきた。最新の店舗デザインでは、席が固定されたシアターから、もっと自由度の高いスペースを実現するようになっている。

フォーラムのデザインは、いくつかのメリットがある。シアターを設置する場合、大きなスクリーンを設置する横幅だけでなく、収容人数を確保するための奥行きも必要だった。そのため、狭い店舗ではシアターが設置できず、シアタースタイルのイベントは実施できなかった。

しかしフォーラムでは、大きなスクリーンの前にスペースを作ってボックス型の椅子を配置すれば良いだけであり、例えば現在のApple本社にある直営店、Apple Infinite Loopのような、奥行きのない店舗でも、フォーラムを実現できる。

今回の発表に先立って、米国では8割ほどの店舗の改装を行い、フォーラムでのセミナーに対応するデザインを施した。またスクリーンを設置していない店舗でも、可動式のスクリーンを用いて、セミナーを行えるようにするという。

筆者の住んでいるカリフォルニア州バークレー周辺のApple Storeを見ると、バークレーのショッピング街にあるApple 4th Streetは、新しいデザインの店舗への改装を行わず、おそらく可動式のスクリーンを採用してセミナーを実施することになるはずだ。

一方隣町、Pixarのスタジオがあることでも知られるエメリービルにあるApple Bay Streetは、ショッピングモール内でより広い店舗へ引越し、フォーラムでのセミナーに対応する設備を整えたようだ。

フォーラムに限らず、新しいデザインのApple Storeは、床材や天井に白い素材を使って、少ない光量でも店舗内を明るくすることができる環境対応とともに、アクセサリーをテーマごとに紹介したり、バーカウンターではないスタイルでのジーニアスバーを設置するなど、その姿を変えつつある。