声優・村川梨衣が自身初となるワンマンライブ「1st RiELiVE~梨の季節~」を4月1・2日、東京・品川ステラボールにて開催した。今回は2日の公演をレポートする。MC等での普段のハイテンションぶりはさることながら、ときにキュートにときに切なく、またあるときは元気いっぱいに……と、わずか2時間弱の間に多彩すぎる表情を見せた村川は、"表現のファンタジスタ"だった。

声優・村川梨衣

可憐さ引き立てる、バイオリンの音色

定刻を迎えると、まずは交響曲をバックにバンドメンバーが入場。そのなかにバイオリンがいるのが、実はファンから見たわかり手ポイント。彼女の楽曲に爽やかさや"RiEMUSiCらしさ"を与えるのに必要不可欠な音色が、同期でなく生で奏でられることは、実に喜ばしいことだ。

そして「Anytime, Anywhere」の演奏が始まる。イントロの涼やかなバイオリンの音色に乗るかのように、ステージに村川が登場。この曲では振り付けは手のみで最小限に、メロでは可憐な、サビでは少々力強さの加わった歌声をそれぞれ響かせていく。続けてアルバム『RiEMUSiC』の曲順通り、そのリード曲「Dreamy Lights」へ。イントロに「ようこそー! 梨の季節へ! 今日は思いっきり楽しみましょう!」との挨拶を挟んだ彼女は、歌い始めた瞬間再び一気にスイッチチェンジ。歌唱中は表情含めて楽曲を表現する一方で、間奏ではにぱっと笑う。これぞ、プロ・職人らしいギャップではないか。

そして力強さと自らの意志が乗る楽曲「Breath」では、実に高い最高音もしっかりと歌いこなす。歌唱に合った身振りのタイミングと凛とした表情のまま1曲を通してはいたのだが、Dメロ直前では胸に手を当てて、さらに曲に"入る"。そうして歌い上げたDメロ明けのギターソロもその叫びを受け継ぐかのようで、メンバーと一体となっての楽曲表現を届けてくれていた。

凛々しく楽曲を終えた村川だが、MCでは「……はいみんなー!」といつもの"りえしょん"に戻り、1階席・2階席の順にコール・アンド・レスポンスでつながっていく。そんな彼女から、のっけから「新曲を作りましたー!」とのうれしいサプライズが。「3秒数えて!」とファンに"給水時間"のコールを呼びかけ会場の視線をひきつけたら、その新曲「レクイエム」を歌い始める。メタルのようなスピードの速い彼女の、声の芯の力強い部分を活かしたナンバーで、曲前の現状リリース予定が未定なのが非常に残念になるほど、心に身体にビンビン来るナンバー。そこにどんなメッセージが言葉として載せられているのか、"その日"が来るのが楽しみだ。

続く「MaGiK」ではその勢いを引き継ぎつつも、その表情には少々笑みも混じった小悪魔的なものに。ステージ上を動き回ったり、ソロ直前のギターにネコのようにちょっかいを出したりと、その立ち居振る舞いにも小悪魔具合が顔を出す。しかしそこから「夜明けの恋」に続いたのは、正直驚いた。なぜならこの曲、アルバムのラストを飾る可憐で線の細いバラードだから。まっすぐ真正面を見つめながら歌う村川の姿は、恋する美少女以外の何者でもない。その可憐さをより引き立てるのが、やはり生で奏でられるバイオリン。会場の雰囲気も、もちろんまたガラリと変わる。ライブグッズの剣型ペンライトも、一応彼女からの指定色で輝いてはいたが、それを無闇に掲げるよりもただ手にしたまま歌声にじっと聴き入る者のほうが、遥かに多かったように思う。

儚さから爽やかさまで、中盤以降に見せた豊かな表現力

歌唱後に村川は一旦降壇。と同時に、ステージの真下には、ライブタイトルになぞらえてか千葉県白井市のゆるキャラ・なし坊とその妹・かおり(ともにCV:村川梨衣)が登場。グッズを紹介しながらの小芝居を展開していく。なかでもなかでも剣型ペンライトを使用してのファンとの意思疎通タイムでは「緑……のち赤!」などのハードルの高いリクエストを、「歴戦の猛者たち(※なし坊談)」が一体となってこなすひと幕も。それを目にしたなし坊は、「次の曲に合わせて、緑にしよう!」と予告もそこそこに、(「自らの席へと戻る」という体で)かおりを連れてステージ前から去っていった。

入れ替わりに、ひとりステージに登場した村川。その中央で儚い歌声がテクノサウンドに映える「Eternal」から第二幕がスタート。終始切ない表情で、指の曲げ伸ばし・折り方に至るまで細部まで見せ方にこだわったダンスをピシッと決めていく……かと思ったら、今度は真逆のベクトルの、明るくキュートな「恋するパレード」へ。恋する女の子のかわいらしさやバタバタ感を歌詞に合わせて載せた振り付けは、イントロでのキューピッドの矢を放つような振り付けから口火を切り、軸線上のファンのハートを撃ち抜いていく。曲のラスト、ウサ耳のように頭に両手をぴょんと乗せた決めポーズも、また愛らしい。

ステージが虹色のグラデーションに包まれる中、バンドメンバーも再登場。村川も、意外とここまで聞くタイミングのなかった「レクイエム」の感想や、ダンスが印象的だった直前2曲などを中心にここまでの楽曲を振り返る。特に前者では大好評を表す歓声が返ってくるさまに、「新しいかっこよさよね!」と本人も大満足の様子だった。

そして前半に引き続き、給水のためにファンへ「3秒数えて!」とムチャぶったところで、今度は少しレトロなムード漂う「クリームソーダとエンドロール」へ。大人っぽすぎず、かといってキュートすぎず。サビの「エンドロール」のポイントで、サッと横に、続いて縦に腕を振る仕草がまさにエンドロールそのもの。そのパートを含め、テンポの割に細かな振り付けもこの曲の印象的なポイントだった。さらにその切なさを引き継いだのが、「戻れない旅」。この曲でも振り付けは最小限に、歌声により魂を込めたような1曲に。メロ部に代表されるような歌声の繊細さから大サビでの力強さまで、その表現の幅を感じられる1曲となった。

だが、切なさはここでおしまい。今度は爽やかなナンバー「ドキドキの風」へと移る。サビ終盤の、高音のファルセットを美しく響かせる村川は、楽曲中終始清涼感のある歌声を響かせる。客席はブルーのペンライトの光で染まり、翻ってステージ上のライトは薄ピンク。このコントラストもまた、楽曲に似合う淡い恋心らしくて良いではないか。その光景を目にした村川はさらにうれしさをあらわにし、笑顔でリズムを取りながらさらに観客を煽っていた。

そんな素敵すぎるステージも、あっという間に終盤。初日は"体感5分"だったと語る村川は、続けて「今日も!」と述懐。その楽しいステージの実現がただただうれしすぎて、うまく言葉にできていないよう。そんな気持ちが先走る姿もまた、"りえしょん"っぽい。次の曲が本編ラストと告げたところで客席から起こった「やだー!」の声にも、「そうよねー、りえしょんも!」と即座に返したところからも、その心持ちが感じられた。

そんなMCと、今度は"4秒"もらっての給水を経て、最後はやっぱりこの曲。デビュー曲「Sweet Sensation」での締めくくりへと向かう。イントロで一気にピンクに染まったフロアが、彼女の前に広がる。その光景を前にした村川、頭サビ後に早くも喜びを爆発させ、この日いちばんの高さとエモさでジャンプして客席を煽り始める。それもただ闇雲に炸裂するだけでなく、1-Aメロの「キミが好き」でフロア全体をさーっとさらう巧さも併せ持っていたし、Bメロ後半での拳を突き上げての煽りで観客が乗せて、サビの頭にはこの日いちばんの一体感を作り上げていた。その姿、やはりこの曲が村川随一のハマり曲であることを、自ら体現しているかのようだった。また、2サビ明けの少々長めの間奏部では、ゆーっくりステージを往復して大切に観客一人ひとりと目を合わせる。それはこの空間をともに作ってくれたファンへの感謝の表れでもあるようだし、過ぎゆくこの時間を少し惜しむかのようでもあった。