市場動向調査企業の台湾TrendForceは5月2日、モバイルDRAMの価格上昇により、2017年におけるスマートフォン(スマホ)1台あたりに搭載されるDRAMの平均記憶容量の伸びが鈍化する見通しを発表。当初の3.7GBから3.2GBへと引き下げた。

TrendForceのスマホ担当アナリストであるAvril Wu氏は、「スマホ1台あたりに搭載されるDRAMの平均記憶容量が2016年は2.4GBであったが、LPDDR4が市場の主流になったこともあり、2017年には3.7GBまで伸びると年初に予測していた。しかし、モバイルDRAMの価格上昇が止まっておらず、スマホメーカーのコスト負担が増しており、スマホメーカーは、メモリ容量を増やそうという従来からの動きを抑えるようになっている」と述べている。

スマホに搭載されるDRAMの容量はどこまで増えるのか?

Wu氏は、スマホのブランド、特にAndroid系では、「OSのオープンソース性に関連したパフォーマンス上の問題のため、一定期間使用していないと低速になる傾向がある。スマホメーカーでは、DRAM容量を増やすことで、処理速度を維持・向上させ、ユーザーが満足のいく体験を保証することを、製品の設計段階で検討してきた」と説明しており、パフォーマンスの向上に対する消費者ニーズがメモリ容量の増大を支えてきたと指摘。また、「ハードウェアの仕様も、特に中国の消費者を中心に購買の決め手に影響を与えている」とも説明しており、アプリケーションプロセッサの能力のほかに、DRAMの容量が消費者の価値の重要な指標であることを強調。「すでにスマホのメモリ容量の増加率は、タブレットPCや他のコンピューティングデバイスよりも高くなっており、いくつかのハイエンドスマホで、4GBもしくは6GBのモバイルDRAMが搭載されるようになっており、一般的なノートブックPCの仕様に匹敵している」とも述べている。

しかし、そうした消費者からのニーズに対し、モバイルDRAMの価格高騰が、スマホの利益を圧迫する事態となっている現在、規模の経済性と利益を享受できるのはSamsung ElectronicsやAppleなど、ごくわずかな大手にすぎないという。同氏は、スマホで収益を上げるためには、年間出荷台数を4000万台、場合によっては5000万台を上回らる必要があると見ており、モバイルDRAMの価格が高騰すれば、求められる台数はさらに増すこととなり、必然的に1台あたりに搭載されるDRAM容量は削減されることになるとする。

4GBのDRAMを搭載したiPhoneは2018年以降に登場か?

メモリ価格の上昇は、iPhoneの年間出荷台数を2億台以上に維持しているAppleのコスト構造にも影響を与えることが予想されると同氏は指摘。同氏は、モバイルDRAMは逼迫した供給状況が年内は続くとの見方を示しており、Appleはサプライチェーンを維持しながらコストをコントロールするという難しい決断を下すことになる可能性があるとしている。そのため、2017年にリリースされることが見込まれている3種類のiPhoneのうち、5.8インチAMOLEDディスプレイ搭載モデルと5.5インチLCD搭載モデルには3GBのメモリが搭載されるが、4.7インチLCDモデルは2GBに留まるとする。同氏は、こうしたメモリ価格の問題もあり、Appleはおそらく2018年までiPhoneのメモリを4GBに引き上げることはないだろうと見ている。

なお、同氏は「モバイル製品がPCに代わってDRAMの主要消費市場となった結果、スマホの出荷数と搭載されるメモリ容量は、需要と供給の関係と密接に関連するようになった。そのため、現在の価格高騰の波は、スマホメーカーのサプライチェーン管理能力をテストしているともいえる」と述べており、小さいスマホブランドほどコストに対する圧力が重くのしかかってくるようになるとしている。