ノースカロライナ州立大学(NCSU)の研究チームは、水のナノ薄膜層を加えることによって二次電池の充放電が高速化する現象を発見したと発表した。二次電池の大容量化および高出力化技術につながる可能性がある。研究論文は、材料化学専門誌「Chemistry of Materials」に掲載された。

低温・高分解能の透過電子顕微鏡(TEM)による酸化タングステン水和物の像。縞模様に見えているのが個々の酸化タングステン原子層であり、層間に水の層が入り込むことで分離されている (出所:NCSU)

今回の研究では、酸化タングステンおよび層状の酸化タングステン水和物という2種類の試料について、電池電極材料としての性能比較を行った。酸化タングステン水和物のほうは、積層された酸化タングステンの層間に原子レベルの厚さの水の層が入り込んで、酸化タングステン層を分離する構造となっている。

実験によると、10分間の充電時間をとった場合には、酸化タングステン水和物よりも、通常の酸化タングステンのほうがより多くの電気エネルギーを蓄えることができた。しかし、充電時間を12秒間という短時間にした場合には、通常の酸化タングステンよりも酸化タングステン水和物のほうが貯蔵できるエネルギー量が大きくなった。

水和物のほうが、通常の酸化タングステンよりもエネルギー貯蔵の効率がよく、熱となって失われるエネルギーが少ないという。層間に入り込んだ水の層がイオン伝導の新たな経路として働いている可能性が考えられる。

二次電池の開発目標としては、大きく分けてエネルギー貯蔵の大容量化と、エネルギーを急速に貯蔵し急速に取り出す高出力化があるが、通常この2つの目標は両立させるのが難しい。研究チームは、今回の研究について「まだ概念実証の段階」と断りつつも、水の薄膜層の効果を利用することで二次電池の大容量化と高出力化を同時に実現できる可能性があるとし、「より薄い電池の実現や、再生可能エネルギーベースの電力網に適した急速電力貯蔵、急加速可能な電気自動車といったさまざまな応用につながる」とコメントしている。