大阪大学と富士通、富士通研究所は4月3日、将来の低炭素化社会に対応した次世代クラウド基盤の開発に向け、省エネルギー技術やセキュリティ技術の研究、および所属する大阪大学学生を主な対象に、低炭素化クラウド基盤技術を持つ次世代技術者の育成を行う「富士通次世代クラウド協働研究所」を大阪大学サイバーメディアセンター内に設立した。

クラウド基盤やそれを格納するデータセンターの消費電力は世界的に増大を続けており、CO2排出量削減が喫緊の課題となっているほか、急速に拡大するAI活用では大量のデータや演算処理が必要となるため、多くの電力消費が予想され、データセンターの省エネ化、および低炭素化技術の研究開発に対する社会的な要請は高くなっているという。

このような背景から、大阪大学と富士通では、2016年11月から大陸間データセンター連携の共同実証実験を行うなど、データセンターの抜本的省エネ化および低炭素化を実現する次世代技術開発に取り組んでいる。

また、富士通は「DLU」(Deep Learning Unitの略。富士通が開発中のDeep Learning用のプロセッサ)をはじめとした低消費電力プロセッサ技術の開発を行っており、大阪大学はサイバーメディアセンターITコア棟にて機械学習制御による空調最適運用などを適用した低炭素化データセンターを実現するとともに、サーバ負荷再配置による発熱量平準化などの省エネデータセンター運用技術を研究している。

クラウド協働研究所の設置期間は2017年4月~2020年3月の3年間、主な研究テーマは以下の5点。

  • AIの学習データや実験データなどを地理的に離れた複数の大陸に地域分散保存し、データセンターの内部冗長化により損なわれる省エネ性能を抜本的に解決するCold Storage Geo Replication技術およびその活用技術

  • 液体浸潤冷却技術や冷媒の自然対流、重力を利用した冷媒移動など、エネルギーを使わない冷媒搬送技術による革新的な冷却技術を用いたデータセンター省エネ技術

  • IoT機器向け認証技術(注5)により、データセンターの外部から機器を制御して省エネを実現するセキュリティ技術

  • GPUや、富士通が開発するディープラーニング専用プロセッサ「DLU」をはじめ、低消費電力プロセッサ技術を活用した次世代AI基盤の省エネ・低炭素化技術

  • 上記を基に構築したテストベッドによるPoC

今後、3者は連携して研究開発を実施し、その成果をベースに協働研究所や協働研究所が参画するコンソーシアムが内外に構築したテストベッドなどを通じてPoCを行うとともに、中長期的に即戦力として柔軟に対応できる人材を育成するとしている。さらに、協働研究所で開発した省エネ技術をもとに、消費電力の増大が予想される次世代クラウド基盤、次世代AI基盤の省エネ化・低炭素化を目指す方針だ。