てんかんを患う女性が安全に妊娠・出産をするためのポイントを紹介

てんかんは年齢や性別に関係なく発病するが、近年は治療法も進歩してきており、難治性てんかん向けの治療法も確立されてきている。ただ、妊娠という生命の神秘を体験する可能性のある女性や、これから先長い人生を歩む小児にとってのてんかんは、通常よりも事情が込み入るケースがある。

今回は、高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師に「女性と小児のてんかんで気をつけるべきポイント」についてうかがった。

抗てんかん薬が血中葉酸濃度を下げる可能性

てんかんを患う女性にとっての関心事の一つに妊娠・出産があげられるだろう。てんかんに罹患していても、適齢期の女性であれば妊娠・出産は可能だ。また、一部の遺伝するてんかんを除き基本的にはてんかんは遺伝しないとされ、さらに男性の抗てんかん薬服用による妊娠・胎児への影響は、現在のところ影響はないとされている。

ただし、てんかん発作や服薬している薬など、いろいろと注意すべき点もある。そのため、安全・安心な妊娠・出産をするためにも、子どもを望む場合は事前に主治医と綿密なカウンセリングを重ねた方がよい。

妊娠を選択するとなったら、通常の女性と同様に葉酸の摂取が推奨されている。「てんかん治療ガイドライン2010」は妊娠前で一日0.4mg、妊娠時で0.6mgの葉酸の摂取が望ましいとしている。葉酸を摂取することで催奇形性(さいきけいせい: 奇形を生じさせる性質)のリスクも低減できるため、妊娠を考えている女性は予防的な観点からも積極的に葉酸を摂取したい。

だが、一部の抗てんかん薬を服用すると血中の葉酸濃度が低下する。そのため、医師と相談のうえ、場合によっては薬を変更したり、投薬量を減らしたりする必要も出てくる。

「妊娠初期に抗てんかん薬を内服していると、催奇形性のリスクが5~10%(一般人口での発症率は2~5%)ほどあると言われています。副作用が出る恐れもありますし、長期間にわたって服用することを考えると、抗てんかん薬はできるだけ少ないに越したことはありません。多剤併用よりも単剤にした方がいいケースも出てくるでしょうね」

自己判断で薬の量を加減するのは危険なので、必ず専門医の指示を仰ぐように。

てんかん発作が胎児に与える影響とは

妊娠中のてんかん発作が胎児に与える影響も念頭に置いておかなければならない。実際、妊娠中は代謝活性が増加して抗てんかん薬の血中濃度が低下するため、発作が増加するケースも少なくないとのこと。

現時点までは、「妊娠中のてんかん発作」と「産まれてくる子が障害を発現する確率」の相関性について明確な医学的根拠は確認されていない。ただ、てんかん発作時に胎児は低酸素状態になると考えられており、頻回に起きるようだと切迫流産や早産の原因となりうる可能性も指摘されている。時期によっては発作の再発防止を優先し、薬剤の増量を検討することになる。

また、出産後の授乳による子供への影響も危惧するところだろう。一部の抗てんかん薬は母体血中から母乳中にも移行しやすいものがあるが、基本的には授乳は可能である。

ただでさえ、妊娠は心身ともにかなりの負担を女性に強いる。てんかんを持病に抱えながら出産するというのであれば、本人の意思はもとより、パートナーや家族らのサポートが必須と言えよう。