あらためて考える、スポーツカーを作る意味

あらためて考えてみると、自動車メーカーがビジネスを展開する上で、どのような商品を作って売るかはメーカーの自由だ。利益を確保したいのなら、なにも手間をかけてスポーツカーを作る必要などない。本来、スポーツカーは実用車よりも圧倒的に市場規模が小さい上に、税金や保険が割高となっている地域は世界でも少なくない。好きでも手に入れられる人が限られるのがスポーツカーという商品だ。

とはいえ、それでもスポーツカーを好む層は確実に存在する。購入には至らなくても、多くの人にとって興味や憧れの対象となるので、数は売れなくても話題性が高い点にも価値があるし、そもそもメーカー自身にも、開発や商品企画に携わる中でスポーツカーを作りたがっている人が大勢いるのだ。

そして、自社のラインアップにどんなスポーツカーを持っているかというのは、そのメーカーの器量を表す目安になると筆者は考える。

イメージで欧州列強に対抗?

それでは、なぜトヨタはスポーツカーに注力するのか。すでに世界屈指の規模になって久しい同社だが、イメージでは欧州列強に及んでいない現状を打破するため、良質なスポーツカーを持つことが不可欠と考え始めた、という見立ては大きく外れていないだろう。

昨年、スバル版の姉妹車BRZとともにビッグマイナーチェンジを実施した86は、手頃な価格とパワーのFR車というマーケットが今でも確実に存在することを知らしめた。一方、レクサスにはRCやLC、毛色は少し違うが「GS F」などがあり、ほかに大半の車種にFスポーツというスポーティグレードが設定されている。

“とっつきやすい”スポーツカーの市場が確実にあることを示したトヨタ「86」

そしてスープラは、レクサスブランドではなく、あくまでトヨタブランドのフラッグシップスポーツとして、2011年に「戦略的な協力関係」を結ぶべく覚書に調印したBMWとの協業により開発中であり、開発責任者が足しげくドイツに通っているという。

トヨタのスポーツカーを代表する存在になりうる次期スープラ。情報は少ないが、このクルマの先行きと、トヨタにとっての存在意義を考えてみたい。