富士通研究所とFujitsu Laboratories of America(FLA)は3月21日、スループットを向上させる新しい光ネットワークの伝送性能推定技術を開発したと発表した。これにより、実際のネットワークのスループットを最大限発揮できるようになり、高効率な通信インフラの提供が可能になるとしている。

従来技術と新技術の概要

光ネットワークは、運用中にある地点間で追加の通信要求が発生した場合、その地点間の伝送性能を推定することで実現可能なスループットを算出し、この結果に基づき新しい波長の信号を追加している。また、数多くの光ファイバや通信機器で構成し、光ファイバの損失や増幅器の雑音量など、個々の物理パラメータについて、すべてを計測して正確に把握することは困難なため、従来は光ファイバや通信装置の設計仕様値に基づいて伝送性能を推定していたという。

しかし、安定したネットワーク運用を担保するため実際の伝送性能より過小に見積もる必要があり、結果として本来使えるはずのネットワーク・スループットに対して制限を受けた状態で運用していた。

新技術では、運用中の光ネットワークを構成する装置から得られる一般的な観測値である、ビット誤り率を使ってネットワークの特性を学習することにより、運用時の伝送性能を高精度に推定。光ネットワークの物理特性を模した計算モデルから算出するビット誤り率と、運用中の光受信器から得られるビット誤り率を比較し、その誤差が小さくなるように計算モデルに対して機械学習を行う。

これにより、光ファイバーの損失や増幅器の雑音量などそれぞれの物理パラメーターに対するビット誤り率の感度を分析し、その感度の大小に基づき自動的に適切なパラメータ更新量を算出し、ビット誤り率だけの情報から効率的な学習を実現したという。新技術を運用中の光ネットワークに適用することで、新たな通信経路を追加する際の伝送性能を高精度に算出可能になるとしている。

光ネットワークの伝送性能を推定する技術

実証検証では、富士通研究所が構築した伝送距離約1000km相当の光ネットワーク・テスト・ベッドを用いて実施。得られた結果に基づきFLAが推定精度の分析を行なった結果、同テスト・ベッド環境における推定誤差が15%以内であることを確認した。

さらに、今回の検証結果に基づいてネットワーク・シミュレーションを行い、伝送経路によっては1波長あたりの信号スループットを最大50%改善し、光ネットワーク全体としてスループットを約20%改善できることも確認。

両社は今後、同技術の精度検証を進め、富士通の光伝送システムである「FUJITSU Network 1FINITY」シリーズや、 広域ネットワーク仮想化ソリューションである「FUJITSU Network Virtuora」シリーズに適用する技術として、2018年度中の実用化を目指す。