独立系半導体ナノテク研究機関であるベルギーimecは、3月7日~8日にブリュッセルで開催された化合物半導体技術に関する国際会議「CS International Conference」において、シリコンに替えてInGaAsのみを構成されたTFET(トンネル電界効果トランジスタ)を発表した。

同デバイスは、超低電圧電源で動く低消費電力アプリケーション用の次世代チップであり、室温でのサブスレッショルド・スイングは60mV/decade未満を実現したとのことで、電界効果トランジスタ(MOSFET)に取って代わる有望な次世代候補技術とimecでは判断しているという。

TFETは、MOSFETとは異なるキャリア注入メカニズムを利用している。MOSFETはソースからチャネルにキャリアを注入するが、TFETは価電子帯から伝道帯へのトンネリング(band to band tunneling)現象によって動作する。これにより、60mV/decadeより小さいサブスレッショルド・スイングが可能であり、これはMOSFETで実現可能な限界以下の値であるとのことで、TFETは0.5V未満での電源電圧での動作も可能になるとする。

今回、imecで開発されたデバイスはInGaAsホモ接合TFETで、100pA/mmで54mV/decadeの最小サブスレッショルドスイングを示す。デバイスのEOT酸化(酸化膜等価厚)は0.8nmで、これは所望される60mV/decade未満の性能を達成する上で重要な役割を果たしているという。

なお、imecでTFETの研究を主導する技術スタッフのNadine Collaert氏は、「我々の新たな半導体チップ技術は、電力、性能、コスト、面積のトレードオフを考慮すべき時代に入った。これらのトレードオフは、異なるアプリケーションの領域ごとに個別に検討されることになる。TFETはおそらく超低消費電力・超低電圧動作が必須の領域で実力を発揮するだろう。IoTなど将来の多くのアプリケーションでは、低電力と低電圧で動作するトランジスタが必要で、それには、TFETを用いたデバイスが最適になるだろう」と述べている。