DJI初の農業用ドローンが日本で発売 - DJI最大のペイロード&重量

DJI JAPANは3月8日、東京都あきる野市にて農薬散布用ドローン「AGRAS MG-1」の国内販売開始を記念した製品紹介と散布デモンストレーションフライトを行った。すでに3月1日より販売代理店を通じて販売開始しており、参考価格は180万円前後。

DJIの農薬散布用ドローン「AGRAS MG-1」

展示されていたMG-1。右下に見えるのは専用のコントローラ

DJI JAPANの呉韜代表取締役によると、農業用ドローンのプロジェクトは3年前からスタートしており、製品化までにもっとも時間のかかったプロジェクトになったという。

先行発売されていた韓国と中国、そして日本からもフィードバックがあり完成度の高い農業用ドローンになり、農業に対して安全安心と効率化に貢献したいという。

詳細説明の前にビデオで試用した方々の声を紹介していた。従来の散布車を使う場合、ローダーに乗せて運ぶ必要があるがMG-1ならば軽トラで運べ、メンテナンスも容易だという。

説明に先立ち流されたビデオ。ハイクリブームを使った作業の場合、ローダーで運ばなければならない。散布請負の場合は次の作業場に行く前に車輪についた土を水洗いして落とす必要があった

MG-1ならば軽トラで運べるという。広くないあぜ道の先にある田畑でも利用できるだろう

MG-1の主な仕様は最大10Lの農薬を搭載し一回のフライトは最大10分間(離陸重量22.5kgの場合)。これで最大1haの散布が可能になるという。また3方向にミリ波レーダーを取り付けており作物の上の空間を安定して飛ぶことができる。

専用のフライトコントローラを搭載しており液体物の農薬、肥料、除草剤でも安定したフライトが行えるようになっており、本体はIP43の防水防塵設計となっている。散布は2系統それぞれ2本のノズルから状況に合わせて散布し、流量センサによって安定した散布が実現できる。

フライトは現在手動モードと手動強化モード(あらかじめ設定した散布幅だけ横移動がワンボタンで可能になる)が用意されている。

将来、農林水産航空協会の承認が下りれば、現在ロックされている自律散布システムもファームウェアの改定で利用可能になるという。

オプションとしては電線などの障害物を検知するレーダーモジュル、cm単位の制御補正を行うRTK、多数の電池を同時に充電セット可能な受電ハブが用意され、粒剤散布装置も検証中だそうだ。

MG-1は1回のフライトで最大1haの散布が可能。予備のバッテリと農薬を用意しておけば交換・追加して次の散布が行える

アームは折り畳み式で約1/4(1471mm×1471mm×482mmのサイズが780mm×780mm×482mm)になる

三方向(前後と真下)にミリ波レーダーを出すことで作物から一定距離を保つことができる

専用送信機は高輝度ディスプレイを採用。こちらも一応防水防塵だそうだ

エリアを指定した自律散布は日本では使用不可だが、許可が下りればファームウェアアップデートを行う

主なオプション。連続作業を行う場合には充電ハブが必須だろう

ドローンを運用するために必要な教育・保守体制に関しては、一時販売代理店と共同で農林水産航空協会認定の教習施設と整備事務所を全国に設置。教習が完了すると農林水産航空協会のライセンス取得が行え、4月末を目途に30カ所の設置を予定しているという。

また認定教官による教習プログラムが用意されており、初心者向けの5日間コースと経験者向けの3日コースが用意されており、認定教官はすでに100名育成した。

MG-1を導入するためにはMG-1本体だけでなく研修プログラム、保険やオプション類が必要となるが、おおむね200万円程度を見込むことになるという。

MG-1の普及に向けて教育と整備にも力を入れる。4月末までに30カ所で教習が受けられるようになるという

教習はDJIのオリジナルテキストと認定教官による3/5日のコースを用意

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質疑応答で聞いたところ散布の請け負いよりも農家が取得して自分の田畑を必要なタイミングで散布することが主体と想定しているようだ。

平たい田畑の場合は機械化に有利だが、まだまだ残る段々畑や柵田の場合は機械化が難しい。MG-1の場合はアームを折りたたむことで80cmの幅(780mm×780mm×482mm)となり、ビデオでも紹介されていたように軽トラに乗せてより近くまで運ぶことができるだけでなく、ミリ波レーダーによって高さを維持して散布できる小回りの良さがある。

導入費用がやや気になるが、小規模農家の省力・機械化に貢献できそうな製品が出てきた印象を受けた。

ここからフライトデモ。前方のノズル2本から散布中。吐出はノズルあたり最大0.525L/分

4本のノズルから散布。約5分の全開散布でタンクがカラになる計算

地上での散布デモ

本体前部。中央のバッテリは左右の黄色いコネクタを介して本体に接続される。バッテリの左から伸びているコネクタは充電用のもの。白い薬剤タンクの下に見えるのがミリ波レーダー

本体後部。ポンプは2系統あり、前後部2つのノズルに取り付けられている

バッテリ。22.2V/12000mAhだが、大型ドローンゆえにフライト時間が短い

専用コントローラ。右下に見えるレバーがモード切替でSは現在封印中

背面。左右にボタンとダイヤルがある

裏側。4つのボタンが付いており、前後散布の指定と手動強化モードの移動ボタンとなっている

右背面アップ。こちらはスマートモード時に使用するため、現在は利用不可。将来の許可とファームウェアアップデートに期待したい

左背面アップ。散布量の設定やフライトモードなどの切替となっている

左半分だけ折りたたんだ状態。ジョイントのネジを緩めるだけなので現場作業は容易だろう

折り畳み状態のややアップ。モーターとパイプがぶつからないようにゴムクッションが入っていた

ジョイント部アップ。実際に回していないが3回転ぐらい締めればよいので作業性はよさそうだ

フライト前のセンサのキャリブレーションをデモしてもらった。大型ドローンゆえに大変そうだ