富士通研究所およびFujitsu Laboratories of America(FLA)は3月7日、複数のクラウドや企業ネットワークにまたがった仮想的なネットワークインフラの設計・構築・運用を容易にする技術を開発したと発表した。

今回開発した技術は、ITインフラのネットワークの構成要素を抽象化し、複数の拠点にまたがった仮想ネットワークインフラを一括して自動的に設計・構築し、一つのネットワークインフラとして運用・管理することを可能にするもの。

今回「ITインフラの抽象化技術」と「仮想ネットワーク機能自動補完技術」の開発が行われた。

「ITインフラの抽象化技術」は、ITインフラを構成する各要素の設定や動作状況の観測機能について、ネットワークの構成要素を模した論理的なソフトウェア部品と対応づける技術。同技術を用いることにより、設計された論理ネットワークから、複数のITインフラをまたいで自動的に仮想ネットワークインフラを構築する。

加えて、仮想ネットワークインフラの運用、障害対応管理についても論理ネットワーク上で行うことができ、仮想ネットワークインフラのライフサイクル(設計、構築、運用、障害対応)管理を、論理ネットワーク上で実現できる。

ITインフラの抽象化技術の概要

「仮想ネットワーク機能自動補完技術」は、仮想ネットワークインフラの設計において、論理ネットワークの接続状況から設計者の意図を抽出することにより、論理ネットワークから仮想ネットワークインフラに変換するために必要な仮想ネットワーク機能を自動で補完する技術となる。

これにより、設計された論理ネットワークにおける構成要素の接続部分に着目し、接続の両端に位置する、ITインフラ、サブネットやノードといった異なるレベルのオブジェクトの接続を確認することで、設計者の意図を判別し、必要となる仮想ネットワーク機能を自動的に補完する。

仮想ネットワーク機能自動補完技術の概要

今回開発した技術により、複数の企業や拠点にまたがる複雑な仮想ネットワークインフラの構築について、専門的な知識なしに短時間で構築可能になるという。

例えば、一つのクラウドと、端末が数十台規模の拠点にまたがった仮想ネットワークを設計・構築する場合、従来、仮想ネットワークの専門知識を持つエンジニアが4人で3日かかっていたものが、同技術を用いることでエンジニア1人が1日で完了できるようになるなど10分の1以下に構築時間を短縮できるとしている。

さらに、同技術を用いることで、業務システムをクラウドへ移行する場合に、論理ネットワーク上での操作を行うだけでクラウドマイグレーションを短時間で実現できるようになる。

また、多数の拠点のネットワークインフラを立ち上げる場合に、一つの論理ネットワークを設計し、その構成を複製するだけで簡単に各拠点の立ち上げやセキュリティ機能の追加を容易に行えるようになるとしている。