アカマイテクノロジーズは2月28日、都内で2016年の振り返りと2017年の事業戦略について記者会見を開き、同社職務執行者社長の徳永信二氏が説明を行った。

アカマイテクノロジーズ 職務執行者社長の徳永信二氏

冒頭、同氏は2016年を振り返り「われわれはウェブパフォーマンス、クラウドセキュリティ、メディアデリバリー、クラウドネットワーキングのポートフォリオを持ち、2016年の日本における事業は堅調だった。年率で売り上げが35%に拡大したほか、顧客数も590社(2016年は160社増)に増加し、主要省庁や金融機関、製造業、流通、運輸などで採用されており、プロダクトミックスで事業を展開できている。また、積極的に将来に向けた事業拡大を試みた」と胸を張った。

さらに「4月にはリアルタイムでのエンドツーエンド・メディア・ストリーミング・ワークフローの監視とサポートを行うBroadcasting Operation Control Center(BOCC)を開設した。また、10月にはエンタープライズアプリへのセキュアアクセスをクラウドサービスとして提供するためSoha Systemと、IoT関連のビジネス強化を目的にConcord Network、11月には振る舞いベースによるBot検知技術を提供するCyberfendをそれぞれ買収している」と語った。

2017年以降に取り組む施策とは

徳永氏はパフォーマンス、セキュリティ、メディア、エンタープライズの各市場における2017年以降の施策について説明し、パフォーマンス市場では「今後、日本におけるインターネット利用はさらに加速すると考えており、デジタルトランスフォーメーション(DX)とモバイルアプリケーションが重要となる。DXに対し、一般企業や研究機関のあり方はアグレッシブであり、ウェブシステムへの投資の拡大が想定されており、インターネットを安定・高速化させて、セキュアにしていくことが求められている。また、モバイルアプリケーションは高速化ニーズの加速が見込まれている。これらに対応した製品としてはウェブパフォーマンスを最適化する『Ion』、画像の最適化と配信を自動化する『Image Mnager』が鍵になる」と強調した。

パフォーマンス市場に対する新製品概要

セキュリティ市場では「サイバーセキュリティ基本法が可決されて以来、セキュリティに対する意識は上がっており、産業別にガイドラインも発表されている。われわれはエスカレートしていくセキュリティのリスクに対し、ソリューションを投入する。自動化されたDDoS緩和と、拡張性およびWAFを組み合わせた『Kona Site Defender』、企業向けのWAFおよびDDoS防御を行う『Web Application Protector』はAPI防御、SIEM連携、カスタムルールビルダーなどを提供する。また、メディアに関しては動画の配信市場は拡大しており、マーケットのニーズに応えるために2017年はインターネット放送の拡大に向けて『Low Latency Live』『Broadcast Operation Control Center』『Edge IP Binding』、4K放送の普及に対し『QUIC Support』を強化する」と同氏は意気込みを語った。

セキュリティ市場に対する新製品概要

エンタープライズ領域におけるマーケットの事業展開では「クラウドの拡大に対し、すでにクラウド型リモートアクセス管理を行う『Enterprise Application Acces』を発表しており、2017年第2四半期にはクラウド型標的型攻撃対策『Enterprise Threat Protector』、2017年第4四半期にWAN/IPアプリの高速化を図るソリューションを提供していく」と同氏は説明した。同氏は各市場が加速し、新製品が投入されていく中で「メディア、パフォーマンス、セキュリティ、エンタープライズへの対応を進め、2017年はさらに積極的に事業を展開していく。また、2016年に実現したこと以上の成長でマーケットのニーズに応える」と述べた。

エンタープライズ市場に対する新製品概要

ウェブ・パフォーマンス・ソリューション「ION」の最新版を提供開始

同社は、3月1日にアカマイの主力製品であるウェブ・パフォーマンス・ソリューションの最新版「Akamai Ion 3.0」を発表。最新版では、同社の学習エンジンベースの新しい最適化機能を活用しているほか、新しいソフトウェア開発キット(SDK)を使用することで、開発者は迅速にモバイルアプリ体験を提供することが可能になるという。

「Akamai Ion 3.0」の概要

最新版の特徴として「自動パフォーマンス最適化」「モバイル・アプリ・パフォーマンス SDK」「携帯電話網上の最適化」の3点を挙げている。自動パフォーマンス最適化では「Adaptive Acceleration」を採用しており、現実のユーザーデータを活用したパフォーマンス自動化により、企業のパーソナライズされた体験をユーザーに提供できるよう支援し、ユーザー体験が高速でシームレス、かつユーザーのブラウジングに適するようにコンテンツをプッシュする時間を自動的に決定し、サードパーティリソースに事前接続する。

モバイル・アプリ・パフォーマンス SDKについては、開発者がカスタムかつ差別化された体験の作成を支援することに加え、モバイルアプリ開発者は、さまざまなネットワーク状況に応じて(接続が切断されているときでも)一貫した体験を提供できるよう、コンテンツの事前配置を可能としている。

また、携帯電話網上のSureRouteを使用すれば、ラストマイルネットワークの輻輳とレイテンシーを克服できるほか、実際のユーザーとデバイスの知見(カスタム指標を含む)により、開発者が時系列に沿いつつ、モバイル体験をチューニングができるという。

携帯電話網上の最適化に関しては、不安定な携帯電話網接続で一貫したパフォーマンスを提供できるように設計された新機能を搭載。リアルタイムIPv4/6適応などのプロトコル最適化機能を通じてパフォーマンスを向上させるとともに、暗号化を使用する古いモバイルデバイスの接続でのセキュリティを確保する。なお、将来的にIon 3.0をベースにしたインフラを活かし、IoTやコネクテッドデバイスなどへの展開を検討している。