物質・材料研究機構(NIMS)は2月23日、8Kテレビに適した白色発光ダイオード (LED)の試作に成功したと発表した。

同成果は、NIMS 機能性材料研究拠点 広崎尚登フェロー、シャープ研究開発事業本部 和泉真室長、吉村健一研究員らの研究グループによるもので、応用物理学会誌「Japanese Journal of Applied Physics」2017年2月号に掲載される。

8Kテレビでは、現在の16倍にあたる7680×4320ピクセルの解像度に加えて、色の表現範囲も大きく広がるため、現在のテレビで採用されている色範囲の規格に準拠した放送信号では、深い緑色や赤色が表現できない。現状では、8Kの色域の規格であるBT.2020規格が制定されたものの、それを実現するディスプレイは存在せず、現在各社が開発中だ。

液晶ディスプレイは、LEDバックライトが放つ白色光を色フィルターで3原色に分解して画像を表示する装置であり、色再現性の向上にはバックライトに含まれる赤、緑、青の3原色の色成分の色純度を向上させる必要がある。現状のバックライトでは赤色や青色成分の色純度と比べて、特に緑色成分の発色が悪く問題となっていた。

一方、これまでの研究で、透明材料として用いられるγAlONの結晶にマグネシウム(Mg)とマンガン(Mn)を添加して組成を調整することで、LED用の緑色蛍光体となることがわかっていた。同蛍光体は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、フッ化マグネシウム、フッ化マンガンを窒化ホウ素製のるつぼに入れて、5気圧の窒素中、1800℃で反応させることにより製造できる。今回、同研究グループが、組成と製造工程の最適化を行ったことにより、同蛍光体の発光効率が向上。同蛍光体の発光波長は525nmと色純度が高い緑色であり、スペクトルの半値幅が40nmとシャープなことが特徴となる。同蛍光体を利用してLEDバックライトを試作したところ、BT.2020規格の色再現域の90%を達成することができたという。

同研究グループは今後、材料特性の改良による明るさ改善と低コスト化を進めた後に液晶テレビに組み込んで色再現性の調整を行い、2018年の8K実用放送開始に向け、8Kテレビのバックライトに適した白色LEDの実用化を目指していくとしている。

白色LEDバックライトを用いたディスプレイの色再現域(白い三角形)。aが開発品、bが従来品の白色LEDバックライトを用いたディスプレイの色再現域(出所: NIMS Webサイト)