イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校とダウ・エレクトロニック・マテリアルズの研究チームは、LEDと光検出器という二つの機能を兼ね備えた光半導体デバイスを開発した。

このデバイスを用いたLEDディスプレイでは、周囲の明るさに応じて自動で輝度調整を行ったり、ジェスチャー入力に応答するなど、画像表示だけでなく、外部刺激に連動したインタラクティブな機能をもたせることができる。研究論文は、科学誌「Science」に掲載された。

試作された双方向LEDディスプレイの一例。タッチペンでなぞった部分だけが発光するようにプログラムされている(出所:イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)

開発されたデバイスは、溶液プロセスで形成された直径5nm以下のLEDナノロッドを多数並べたLEDアレイである。ナノロッドは3種類の半導体がヘテロ接合されており、第一の半導体がLED発光および可視光の吸収を行い、他の二つの半導体は第一の半導体における電子の流れを制御する働きをもつ。

第一の半導体は、電圧を調整することによって、LED発光素子と光検出素子とのあいだで性質が切り替わる。切り替え速度は、通常のディスプレイのリフレッシュレートの1000倍程度と高速であるため、人間の目で見ると発光と光検出を同時に行っているように見える。

このデバイスを用いると、光信号に対するさまざまな反応をプログラムすることで、これまでにない多機能でインタラクティブなLEDディスプレイが実現できると考えられる。

研究チームが試作したデバイスでは、周囲の明るさに応じてピクセル単位で輝度調節を自動で行ったり、指を近づけるとピクセルが反応するといった外部刺激応答性をLEDディスプレイにもたせられることが実証されている。レーザー式タッチペンを使ってディスプレイ上に文字を書いたりすることもできる。

また、光検出素子の構造は基本的に太陽電池と同じであるため、吸収した光を電気に変換してデバイスの電源として利用することも検討されている。

ユーザーや周囲環境とデバイスを相互作用させる以外にも、ディスプレイ同士を相互作用させて、情報通信手段として使うという応用も考えられる。Bluetoothのような無線通信と比べると通信速度は遅くなるものの、一度に送れる情報が1ビットに限られるシリアル通信ではなく、ディスプレイ上の画素数を増やすことで同時に多数の情報の送受信が可能なパラレル通信デバイスとして利用できる。